ジメチルエーテル
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ジメチルエーテル | |
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一般情報 | |
IUPAC名 | ジメチルエーテル メトキシメタン |
別名 | DME |
分子式 | C2H6O |
分子量 | 46.07 g/mol |
組成式 | |
式量 | g/mol |
形状 | 無色気体 |
CAS登録番号 | 115-10-6 |
SMILES | COC |
性質 | |
密度と相 | g/cm3, |
相対蒸気密度 | (空気 = 1) |
水への溶解度 | 2.4 g/100 mL |
{{{溶媒2}}}への溶解度 | |
{{{溶媒3}}}への溶解度 | |
融点 | −141.5 ℃ |
沸点 | −23.6 ℃ |
昇華点 | ℃ |
pKa | |
pKb | |
旋光度 [α]D | |
粘度 | |
屈折率 | |
出典 | ICSC |
ジメチルエーテルはエーテルの一種で最も単純なもの。DME と略称され、メトキシメタンとも呼ばれる。低温でメタノールを硫酸で脱水すると得られる。組成式は C2H6O、示性式は CH3OCH3 で、分子量は 46.07 である。水素結合を作らないので沸点や融点は低いが毒性はそれほど高くはない。
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[編集] 用途
[編集] スプレー
LPGより引火性が低く、ドライヤー使用時など引火しやすい環境で使うスプレーに使われる。
[編集] 燃料
セタン価が高くディーゼルエンジン向きであり、酸素含有率が高く黒煙が出ないため、環境負荷の少ないディーゼル燃料として期待されている。代替エネルギーを使う低公害車のエンジンである。
ディーゼル燃料として利用するに際して、開発当初は15MPaの噴射圧力を一定に保つ方式が採用された。また、DMEは常温・常圧では気体であるため、LPG燃料などと同様に潤滑性や粘性で軽油に劣る。そのため潤滑性向上剤(主として脂肪酸)を添加するが、粘性向上剤に適切なものは見つかっていないこともあり、低粘性が原因で発生するリーク(液漏れ)対策が行われている。
DMEを燃料としたディーゼルエンジンでの全負荷性能試験で、軽油を燃料とする場合に比べて以下のような特徴が知られている[要出典]。
- DMEは含酸素燃料であり、炭素 (C) 同士が直接結合することがないエーテル結合を有する。このため低速ではスモーク排出が無く燃料噴射量の増量が可能となり、低速トルクを増大させる。これはディーゼルエンジンの最大の特徴が軽油以上に生かされることを示す。
- 15MPa噴射では高速負荷の領域で噴射期間が長くなり、排気温度が上昇することによる出力低減が発生する(高速回転域での出力減退)。
- 排出ガス中の微粒子物質 (PM) が無く、硫黄 (S) を含まないことから硫黄酸化物 (SOx) を発生させない。
- スモーク排出が無いことから、大量 Cooled EGR を実行することで排出ガス中の窒素酸化物 (NOx) が低減される。Cooled EGR とは冷却・排ガス再利用循環システムのことで、酸素の不足した状態の排ガスを冷却して再びエンジンの空気取り込みに利用することで窒素酸化物の発生を抑制する。
- 燃料中に硫黄が含まれていないため、酸化触媒などにより不完全燃焼物 (CO)、炭化水素類 (HC) などが低減される。
[編集] その後の技術改良の動向
高速回転域における出力減退の改善が進められている。また、様々な部品の採用に当たっては個別の研究成果と将来の大量生産を念頭において、軽油との共通性を確保することが検討されている。
噴射孔の数や口径の研究、全負荷性能試験が行われ、一律の条件下では出力の低下を起こすことなどがわかっている。噴射圧と噴射時間を運転条件の中で変化させることによって適切な出力が確保されることが研究されている。
一方、DME燃料自動車に必要とされた燃料の冷却や自動車運転休止中の燃料の配管中からの排除(パージ)なども、その必要性の有無についての検討がなされている。
[編集] 批判
液化DMEは圧縮性の高い燃料であり、入り口から加えた圧力が出口にそのまま伝わらないため、微妙な燃料噴射が実現できず、NOx低減対策や出力調整などできない。また、EGRを実行することは、エンジンの燃焼効率を減少させるため好ましくない。
[編集] 批判に対する反論
圧縮性の高い(弾性率が低い)燃料であることは事実である。しかし、15Mpaレベルでの研究開発ではそのことは指摘されたが、その後の高圧噴射を実現する中で、そのことのマイナス面での影響は指摘される状況にはない。
EGRを実行することでの効率低下は事実であるが、多かれ少なかれガソリン車や軽油ディーゼル車でも行っていることであり、DMEだけがことさら批判される事柄ではない。むしろ、PMやスモークを発生しないために、ディーゼル微粒子除去装置 (DPF) を装着しないことで排気圧力が減少しないことによる効率向上は自動車にとって十分な恩恵であると考えられている。
また、GTL軽油を利用する際に、ディーゼルエンジン圧縮比を13分の1程度に落とすことが実証実験されているというが、結果として低速トルクを犠牲にしている。GTL軽油は天然ガスから合成される軽油様燃料で、セタン価が70以上あり、そのままでは軽油代替としての利用は問題がある。ただし、硫黄を含まない燃料であることは優れた面である。また、多環芳香族炭化水素 (PAH) を含まないために、PMの発生が少なくなる傾向にあるが、完全ではない。
このことは、ディーゼルエンジンの特徴である低速トルクを減じることであり、このことから小型トラックや乗用車向きの燃料との評価がある。軽油を中心に実行されてきたディーゼルエンジンに対して、軽油代替燃料として、GTL軽油とDMEを比較した場合、大型トラックやバスなどの必須条件である低速トルクを軽油以上に発揮できるDMEが、軽油代替燃料としては優れた面であるとされる。
[編集] 燃料電池
直接型DME燃料電池は、ダイレクトジメチルエーテル燃料電池 (DDFC) とも呼ばれ、水素ガスを取り出す改質器を必要としない固体高分子形燃料電池である。同じく改質器が不要なDMFCの燃料であるメタノールより毒性が低く、安全性が高い燃料電池として期待されている。
[編集] 大規模製造
200億円を投資して釧路市に建設されたDME製造のための大規模実証プラント(日産100t)は引受先がないため2007年3月に破棄される予定である。引受希望者にはプラント設備が無償で譲渡される。
[編集] 外部リンク
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