ダイ・ハード
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『ダイ・ハード』(Die Hard)はアメリカ映画。1988年の公開だが90年代のアクション映画の先駆的作品とされる。日本での公開は1989年2月。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] あらすじ
物語はNY市警のジョン・マクレーンが別居している妻に会うためにロス・アンゼルスに飛行機で降りる場面から始まる。空港へリムジンをよこした妻は東海岸に進出した日系企業に認められ成功。竣工中の超高層ビルのクリスマス・パーティーに夫を招待するが、隙間風のふいた夫婦の仲にやるせないマクレーンは会うなり喧嘩をしてしまう……。
一方、彼らのフロアとは無関係に10数名の男たちがビルに侵入すると警備網を容易く破りビルを占拠。シャッターを下ろし電話線を切断する。パーティー会場に乱入した男達のリーダーはハンス・グルーバーと名乗り社員たち全員を人質にとったと宣言する。テロリストの手からは逃れたが外部との連絡も遮断され応援も望めない中で主人公は一丁しかない拳銃と刑事として鍛えた頭脳を武器にクリスマスの夜に死闘を繰り広げる。
[編集] 備考
本作はテレビ映画「こちらブルームーン探偵社」で得た知名度を武器に映画界に転向したブルース・ウィリスを不動のスターに押し上げた。世間とズレてしまった意固地な自分自身に飽きれながらも、体を張って愛する者の命を守ろうとするキャラクターを打ち立てたウィリスは本作の成功に大きく貢献している。命がけの追いかけっこで傷だらけになりながらジョークを交えて相手を挑発する主人公に対し、悪役がサヴィル・ロウ仕立ての背広を着ているのも好対照。
監督のジョン・マクティアナンは高層ビルという縦の構図をアクションに生かし、ビルの内部の人工灯や外で無機質に光り続ける街の明かりで追い詰められた心理を表現。また、爆破シーンもエクスプロージョンを直に見せずに、閉じられたビル内部で粉砕される際のタイムラグを使いサスペンスを高めている。敵の監視の中、あの手この手を使ってフロアを移動する主人公を撮影したカットも秀逸であり、過去の西部劇や脱走劇へのオマージュとしても捉えられる。
それまでのアクション映画といえばメジャー系ではアーノルド・シュワルツェネッガーやシルベスター・スタローンのような肉体派俳優が巨悪と正面から戦うイメージが強かったが、劣勢の主人公が頭脳で挑んでいくという遊びの要素を大きく取り入れたことがゲーム世代の観客に受けた。その後『ダイ・ハード』の二番煎じのようなアクション映画は多発し、メジャー系の新たなアクション映画の革命は1994年の『スピード』まで待たなければならなかった。
設定された舞台は架空の日系企業が建築した超高層ビル(ナカトミビル)で、当時の対日赤字からくる反日感情が色濃く反映されていたと考えられているが、同時にファミリーコンピュータの普及が無ければこの映画自体の成功も無かったという裏返しの意味でも考えられる。
興行的に大ヒットしたため、1990年に『ダイ・ハード2』、1995年に『ダイ・ハード3』と続編が公開された。
題名は「なかなか殺せない」(直訳)、「こんちくしょう」「諦めるな」(原作は「永遠になどあり得ない」)の意。
日本では吹き替え版が3種類存在し、ブルース・ウィリス演じるマクレーンには野沢那智、樋浦勉、村野武範が演じている。いずれも1から3まですべてアフレコを行っている。DVDで採用されているのは樋浦勉版。
1970年代のロデリック・ソープの小説『Nothing Lasts Forever』を原作としており、日本では絶版となっていたが公開前に新潮社が復刊した。リタイアした警官がテロリストと対峙する中での「意識の流れ」がメイン・テーマの典型的な70年代の小説であり、見るべき点は殆どない。映画との関係においては、人質をとられた主人公が相手に悟られないように拳銃を背中にテープで留めるシュチュエーションが似ているくらいである。
パウエルがカールを射殺するラストシーンにかかる音楽はマイケル・ケイメンではなくジェームズ・ホーナーが作曲した『エイリアン2』の不採用曲。公式サウンドトラックの発売されなかった本作で、一般的に音源が入手出来るのはこのナンバーだけである。
[編集] 登場人物
吹替えは左からテレ朝、フジ、DVD版(日テレではテレ朝版を再放送)
[編集] 主人公
- ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス:野沢那智、村野武範、樋浦勉)
- ニューヨーク市警の刑事。階級は警部補。妻のホリーに誘われてナカトミビルにやってくる。長年追いかけている犯人がいるらしく、それを捕まえるまでは家族のいるロサンゼルスに引っ越すことは出来ないらしい(ダイ・ハードの1年後という設定のダイ・ハード2ではすでに引っ越していた)。左利き。自動拳銃ベレッタM92を使用している。偽の身分証明書を見破るなど結構鋭い。
[編集] ナカトミ商事関係者
- ホリー・マクレーン(ボニー・ベデリア:弥永和子、吉田理保子、駒塚由衣)
- ジョンの妻。ナカトミ商事の中心的役割を担っている。テロリストの脅迫に屈せずに敢然と立ち向かう。
- ジョセフ・ヨシノブ・タカギ(ジェームズ・シゲタ:阪脩、藤本譲、不明)
- ナカトミ商事社長兼ナカトミ投資グループ副会長。1937年京都生まれ。5児の父。テロリストの要求を毅然と断ったためにハンスに射殺されてしまう。
- ハリー・エリス(ハート・ボックナー:石丸博也、山野史人、納谷六朗、)
- ナカトミ商事のエリート(?)社員。コカイン常習者。ホリーに気があるらしく、夫がいるとわかっていても食事に誘ったりする。朝飯前に大取引を済ます男と自称し、マクレーンがテロリストから奪った武器を返すように交渉する。
- ジニー(ダスティン・テイラー:伊倉一恵、以下不明)
- ホリーの部下。妊娠している。
- アーガイル(デヴロー・ホワイト:江原正士、以下不明)
- タカギの計らいで空港にジョンを迎えに来たリムジンの運転手。元タクシー運転手。お喋り。妻とうまく行っていないジョンに気を利かせて、ナカトミビルの地下駐車場で待機していたところ、テロリストの襲撃のために閉じ込められてしまう。
[編集] 警察関係者
- アル・パウエル(レジナルド・ベルジョンソン:坂口芳貞、富田耕生、内海賢二)
- ロサンゼルス市警巡査部長。マクレーンの連絡によって最初にナカトミビルにやってきた警察官。その後ビルに異常が無いと思い、パトカーで帰ろうとしたところ、マクレーンにマルコの死体をフロントガラスに落とされ、更にテロリストにM60で蜂の巣にされそうになる。銃の玩具で遊んでいた13歳の子供を誤射したことがあるらしく、以来銃を抜けないでいた。しかし最後にはカールを射殺しマクレーンを助ける。
- ドウェイン・T・ロビンソン(ポール・グリーソン:小林修、以下不明)
- ロサンゼルス市警副本部長で警視。マクレーンを全く信用せず、特殊部隊による突入を決行してことごとく失敗。最終的にはFBIに指揮権を持っていかれてしまう。
- リバース(カーマイン・ゾゾラ)
- 特殊部隊(SWAT)隊員。
- ミッチェル(マット・ランダース:千田光男、以下不明)
- SWAT隊長。
- "ビッグ"・ジョンソン特別捜査官(ロバート・ダビ:麦人、以下不明)
- FBIのテロ対策担当者。白人。テロリストの要求を飲むと見せかけて、武装ヘリによる襲撃を試みる。ベトナム帰還兵らしい。
- "リトル"・ジョンソン捜査官(グランド・L・ブッシュ:谷口節、以下不明)
- 同じくFBIのテロ対策担当者。黒人。同姓の先任者とはもちろん赤の他人。
[編集] テロリスト
- ハンス・グルーバー(アラン・リックマン:有川博、内海賢二、小林勝彦)
- 西ドイツの民族解放機構・ポルシュフライのメンバーに属していたテロリストのリーダー。ナカトミ社の金庫室にある6億4千万ドルの債券を奪う為、部下を引き連れビルを占拠。非常に頭脳明晰で、警察の攻撃にも冷静に対処する。
- カール(アレグザンダー・ゴドノフ:玄田哲章、屋良有作、大塚明夫)
- 警備員を射殺し、ナカトミビルに乗り込むステアーAUGを装備した金髪のテロリスト。弟のトニーをマクレーンに殺されて激昂し、ハンスの命令をも聞かずマクレーンを執拗に追う。肉弾戦も得意で、マクレーンと壮絶な死闘を展開する。
- フランコ(ブルーノ・ドヨン:荒川太郎、以下不明)
- カール、フリッツと主に行動するテロリスト。マクレーンを屋上で追い詰め、エレベーターシャフトに閉じ込める。マクレーンによって自分達の身元がばれるのを気にする。
- トニー(アンドレス・ウィスニュースキー:牛山茂、以下不明)
- カールの弟のドイツ人テロリスト。電話線を細工し、外部との接触を遮断する。工事中の32階を調べに来て、マクレーンと格闘になる。靴のサイズはマクレーンの妹より小さい。
- セオ(クラレンス・ギルヤードJr:田中亮一、以下不明)
- 31階にある金庫室のドアロックを解除する為にやって来た唯一の黒人テロリスト。タカギ社長が金庫室の暗証番号を吐くか吐かないかで、カールと50ドルの賭けをして勝つ。
- アレクサンダー(ジョーイ・プルーワ:田原アルノ:以下不明)
- 主に30階と3階を見張っているテロリスト。ジェームズと組み、攻めて来た警察の装甲車を迎撃する。
- マルコ(ロレンゾ・カッチャランザ:喜多川拓郎:以下不明)
- ハインリッヒやウリと35階の機械室に爆弾を取り付けるイタリア人テロリスト。マクレーンを会議室のテーブル下に追い詰めて「殺せる時にはためらわないことだ」という捨て科白を吐くが、「ご忠告どうも」と切り返すマクレーンに返り討ちにされる。
- クリストフ(ジェラール・ボン)
- セオと一緒に金庫室のドアロックを解除をしていた、見せ場の少ないフランス人テロリスト。ビル爆破の混乱の中、債券を持って脱出しようとする。タバコをよく吸う。
- エディ(デニス・ヘイデン:池田勝、以下不明)
- ビルの警備員に扮し、外から来る人間を見張っていたテロリスト。フットボールのノートルダム大対US](南カルフォルニア大学)の試合でUSCに50ドル賭けているらしい。
- ウリ(アル・レオン:広瀬正志、以下不明)
- マルコやハインリッヒと機械室にC4爆弾をしかける中国系テロリスト。入口から警察が攻めて来る前に、腹が減った為か、勝手に売店にあるお菓子を食べていた。
- ハインリッヒ(ゲイリー・ロバーツ:沢木郁也、以下不明)
- ビルに来るテロリスト入りの貨物トラックを運転していたテロリスト。信管を持っていて、機械室でマルコとウリに爆弾のセットの指示をする。会議室にマクレーンを倒しにやって来る。
- フリッツ(ハンス・バーリンガー:曾我部和恭、以下不明)
- カールとフランコとともにマクレーンを探す長髪のテロリスト。他のテロリスト同様H&K MP5A3を所持、マクレーンとビル屋上や33階のコンピューター室で銃撃戦を展開する。
- ジェームズ(ウィルヘルム・フォン・ホンブルグ:郷里大輔)
- いかつい顔に大柄な体格をしたポニーテールのテロリスト。屋上で見張り中に34階にいるマクレーンを発見、無線で知らせる。ロケット・ランチャーを3階に運んで来る。
[編集] 戦歴
マクレーンが如何にしてテロリストを粉砕したのかは、下記の通り。
- 対トニー
- マクレーンは火災警報を鳴らしてレスキュー隊を呼ぼうとするが、ハンスによって誤報だと片付けられ(実際火事は起こっていなかったが)レスキュー隊は引き返す。激憤するマクレーンだがそこへトニーが送り込まれる。工事用機械の音でトニーをおびき寄せたマクレーンは銃を突きつけて投降するように言うが乱闘になる。ドアを突き破って2人とも階段の下に転落するが、トニーは首の骨を折って絶命した。
- 対マルコ、ハインリッヒ
- 本部からの要請で見回りに来たパウエルに事の次第を気づかせようと、マクレーンは椅子で窓ガラスを割ろうとするが、屋上のジェームスに気づかれてしまう。連絡を受けてマルコが駆けつける。「銃を捨てろ!」「撃つな!」の言い合いが続く中ハインリッヒが遅れて到着。マルコをどかしてマクレーンに銃を向けるが先に数発喰らって吹っ飛ぶ。テーブルの下に逃げ込んだマクレーンをマルコはテーブルの上に乗って追い詰める。テーブルの端に来たところでマルコは「殺せるときにはためらうな」と言い放ってマクレーンを撃とうとするが、逆にためらい無く弾丸を叩き込まれて殺された。
- 対ジェームス、アレクサンダー
- SWAT隊員がテロリストによって次々倒されていく中、ミッチェル隊長は装甲車の出動を指示。ジェームスとアレクサンダーはミサイルを3階に持って行って装甲車を砲撃。33階にいたマクレーンはハインリッヒから奪ったプラスチック爆弾をエレベーターシャフトから投下。激しい閃光と共に悪漢が2人吹き飛ばされた。
- 対ハンス、カール、フリッツ、フランコ
- ビル内で偶然鉢合わせしたハンスとマクレーン。ハンスは脱出に成功した人質に成り済ましてマクレーンと行動を共にすることになる。(ハンスは元々イギリス英語喋っていたが、ここでアメリカ人に成りすますためにマクレーンにアメリカ英語で話していた。)万が一に備えてマクレーンはハンスに銃を渡した。ハンスは無線で仲間を呼んでマクレーンに銃を突きつける。何の驚きの表情も見せないマクレーンにハンスは引き金を引いた。しかし弾は発射されない。マクレーンはハンスの正体を見破っており、銃には弾を込めていなかったのだ。そこへカール、フリッツ、フランコが到着。飛び出したフリッツをマクレーンはマシンガンで蜂の巣にする。ついで突進してきたフランコの足を撃った。バランスを崩したフランコはガラスに突っ込んで絶命。マクレーンが裸足であることを知っているハンスはカールと共にガラスを撃つ。身動きができなくなったと思われたマクレーンであったが、その上を直接走って脱出した。
- 対カール
- 屋上に爆薬が仕掛けられていることをパウエルに伝えようとしたマクレーンはカールに見つかってしまい、激しい肉弾戦に突入。銃を奪われ肩を撃たれるも決死の反撃に転じたマクレーンは階段での殴り合いで鎖をカールの首に巻きつけて突き落とす。絞首刑となったカールを尻目にマクレーンは屋上へと向かうのであった。
- 対ウリ
- 人質を屋上に連れて行ったウリはビル内に戻ろうとドアを開ける。しかしそこにはマクレーンがいた。弾丸を叩き込まれてウリはあっけなく死亡した。
- アーガイル対セオ
- 地下駐車場で脱出用の救急車の用意をしていたセオはアーガイルのリムジンによる体当たりを食らう。さらに顔面に鉄拳を打ち込まれあえなく失神した。
- 対ハンス、エディ、クリストフ
- 奪った債券を持って脱出を図るクリストフを銃で殴りマクレーンが登場。ハンスはホリーを人質にとり銃を捨てるように言う。マクレーンはマシンガンを手放した。状況を「真昼の決闘」に見立てたハンスの話を聞いて大笑いするマクレーン。つられてハンスとエディも笑う。しかし次の瞬間マクレーンは背中に包装用テープで留めていた銃を発射。弾丸はハンスの肩を掠め、もう一つはエディの脳天を一発で撃ち抜いた。バランスを崩したハンスはホリーもろともビルから墜落しそうになる。すんでのところでマクレーンはハンスの手をホリーから引き剥がした。転落するハンス(原作ではここでホリーにあたる主人公の娘も一緒に転落し死亡)。
- パウエル対カール
- 死闘が終結しビルからやっと出られたマクレーンとホリー。そこでパウエルと初めて対面する。そのとき、後ろからあろうことかカールが現れマクレーンを射殺しようとする。数発の銃声の後、倒れたのはカールであった。パウエルが過去のトラウマを克服し銃を抜いたのであった。
[編集] キャスト
- ブルース・ウィリス
- アラン・リックマン
- ボニー・ベデリア
- レジナルド・ベルジョンソン
- ジョージ・シゲタ
- アレグザンダー・ゴドノフ
[編集] スタッフ
- 監督:ジョン・マクティアナン
- 製作:ローレンス・ゴードン、ジョエル・シルバー
- 製作総指揮:チャールズ・ゴードン
- 撮影監督:ヤン・デ・ボン
- 原作:ロデリック・ソープ
- 脚色:ジェブ・スチュアート、スティーヴン・E・デ・スーザ
- 音楽:マイケル・ケイメン
- SFX:リチャード・エドランド
- 提供:20世紀フォックス
カテゴリ: アメリカ合衆国の映画作品 | 1988年の映画 | アクション映画