京極堂シリーズ
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京極堂シリーズ(きょうごくどうシリーズ)は、講談社から発行されている京極夏彦の小説のシリーズ。書名に妖怪の名前が含まれるので妖怪シリーズとも呼ぶ。シリーズ第一弾の姑獲鳥の夏は、京極夏彦のデビュー作品であり、メフィスト賞創設のきっかけとなった。講談社ノベルスから刊行されたのち、講談社文庫から通常文庫版と分冊文庫版が刊行される。なお、通常文庫版は1000ページ以上に及ぶことがあり、分厚いことで有名。
[編集] 既刊一覧
- 百鬼夜行――陰
- 百器徒然袋――雨
- 今昔続百鬼――雲
- 百器徒然袋――風
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 主な登場人物
中禅寺 秋彦(ちゅうぜんじあきひこ)
- 本業として、中野で古本屋『京極堂』を営む。家業は住居部の裏手にある「武蔵清明神社」の宮司、副業が祈祷師の一種である「憑物落とし(つきものおとし)」の「拝み屋」。
- 店の屋号に因んで「京極堂」と呼ばれる。「この世には不思議なことなど何もない」と言うのが口癖であり、座右の銘。
- 関口・榎木津とは旧制高校時代からの腐れ縁。
- 宗教、口碑伝承、民俗学、妖怪等に非常に造詣深く、知識と理をもって尊び根拠のない事は語らない。同時に重度の書痴でもあり、家屋敷から店舗に至るまで本で溢れている。いつも和装であり、始終親が死んだような不機嫌な仏頂面である。しかし関口など付き合いの長い者には少しなり感情の変化がわかるらしい。個性の強いキャラクターたちのまとめ役的存在であるが、彼本人も相当の変わり者である。ちなみに古書肆を開業する前は高校教師であった。
- 事件解決に暗躍する役どころながら積極的に干渉する事を好まず、概ねにおいて座敷から動かない。本人曰く「十四の時に力仕事をしないと誓った」らしく、非力であるようだ。
- 戦時中は内地に配属され、とある研究所で他国の民族に対する宗教的洗脳の研究をしていた。当時の事は軽々しい言を善しとしない彼においても最も語りたくない、厭わしい過去のようである。
- 実妹に中堅の出版社『稀譚舎(きたんしゃ)』で科学雑誌の記者を勤める敦子(あつこ)がいる。
関口 巽(せきぐちたつみ)
- 小説家。中禅寺の学生時代からの友人。学生時代は鬱病に悩まされ、現在も完治には至っていない。
- 所属していた大学からの資金援助で以って粘菌の研究を行っていたが、生計が立たなくなったので文章を書くようになる。
- 中禅寺敦子の口利きで稀譚舎の文芸誌に稿を寄せる一方、別名義でカストリ雑誌にも投稿している。
- 臆病で気が小さく、時に失語症になるほどの対人恐怖症で常に不安定。コンプレックスの塊のような人物ではあるが、その割に自己愛の強い部分もある。作中では概ねにおいて散々な言われようであり役回り。
- 理系の学生であったので、本来は徴兵を免れることになっていたはずなのだが、何かの手違いで自身に赤紙がとどいてしまい、結局前線に送られてしまった。学徒出陣であったために将校として一小隊の隊長となり、そのときの部下の一人が木場であった。小隊は、彼ら二人を残して全滅したらしい。
榎木津 礼二郎(えのきづれいじろう)
- 『薔薇十字探偵社』の私立探偵。中禅寺と関口の旧制高等学校の一期先輩であり木場の幼馴染。関口とは対照的に躁病の気がある。眉目秀麗、頭脳明晰、おまけに運動神経もよく喧嘩もめっぽう強い上に旧華族の家柄の生まれという非の打ち所のない人物のようであるが、本人はあらゆる自らの社会的地位には一切無頓着である。探偵は神の就くべき天職であると豪語し、中禅寺以外の全ての人間を自らの下僕と標榜し、時として子供のように面白いものを追及する天衣無縫な変人である。しかし人の道に外れた者には声を荒げて激怒するなど、まともな面もある。
- 元子爵という立場から一企業の長として身を立てた傑物・榎木津幹麿(みきまろ)を父に持つ。このため榎木津自身もやんごとなき身として扱われる事が多いが、当人は「あんな父親と血が繋がっている事を大声で言わないでくれ」と迷惑がっている。他に総一郎(そういちろう)という兄がいる。
- 幹麿によって生前分与された財産で神保町に貸ビル『榎木津ビルヂング』を建て、そこを事務所兼住居としている。実家から世話役として遣わされた安和寅吉という青年(通称は和寅・当人は探偵秘書のつもりでいる)、探偵助手の益田と三人で探偵社を運営している。
- 他人の記憶が見えると言う特殊能力の持ち主。この能力が彼の奇矯さに拍車をかける結果になっている。ただし得られる情報は視覚に限られており、音や匂いや時系列の関係性などは一切把握する事が出来ない。この能力は子供の頃からあったが、戦争中に照明弾をまともに食らって視力を大幅に失って以来、さらに強くなったらしい。
- また一方で人の名前を覚えるのが不得手であり、そもそもその努力をしようとしないため、付き合いの深くない相手を適当な(間違った)名前で呼ぶ癖がある。親交の深い相手でも縮めたり愛称で呼ぶことが多い。
- 戦中は海軍将校であり、剃刀と渾名されるほどの名将であったという。
木場 修太郎(きばしゅうたろう)
- 東京警視庁捜査一課の刑事。榎木津の幼馴染で、関口とは戦時中同じ部隊だった。戦前から職業軍人であり、大戦を経てなお時代劇のような勧善懲悪を求めて刑事の身分となる。「鬼の木場修」と称され、信念のために職業的規範を逸脱してたびたび暴走する無頼漢である。同じく捜査一課所属の青木の先輩であり、元相棒でもある。
- 現場百辺の信念と共に身体を張って捜査をし、劇的な捕り物による一件落着や簡潔な善悪の二項対立を理想としている。榎木津と共に鯨飲の酒豪であり、喧嘩好き。いかつい強面で経歴から想像されるとおりの豪傑であるが、いかにも刑事然とした外見や粗雑な言動・態度と裏腹に本質的にはナイーヴな性格をしている。子供の時分は絵を描くことを好んでいた。ちなみに警察手帳には女優の写真が挟んである。
- 戦中は南方に派兵され、経験の薄い及び腰の上官である関口をなんとなく放っておけずに面倒を見、結果的に二人だけ生還した。
鳥口 守彦(とりぐちもりひこ)
- 不定期発刊のカストリ雑誌「實録犯罪」の編集記者兼カメラマン。實録犯罪は関口が別名義で執筆する三文文書の主な掲載誌でもある。中禅寺敦子とは同業であり、関口を通じて知り合ったのちにもカメラマンとして取材に同行するなどしている。
- 軽快で嫌味のない性格だがやや粗忽なところがあり、諺や慣用句の類をやたらと間違える癖がある。根は真摯な青年である。
- 関口を「先生」、中禅寺を「師匠」、榎木津を「大将」とそれぞれ呼んでいる。
青木 文蔵(あおきぶんぞう)
- 東京警視庁捜査一課の刑事。木場の元相方であり、先輩にあたる木場と彼の刑事としての理念を敬愛している。単独行動を取りがちな木場と対照的に控え目で優等生然としているが、必要と判断すれば遺憾ない行動力を発揮する。
- 性格は実直で真面目。我を張ることが少なく、上司に好かれる性質でもある。木場には経験の浅いひよっこ扱いされているが、いざと言うときには体を張って戦う。やや童顔で見ようによっては学生のようでもあるが、恐らく実際は20代後半である。
- 戦中は特攻隊に配属されていた。突撃前に終戦を迎えたため生還している。
益田 龍一(ますだりゅういち)