旅行貯金
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旅行貯金(りょこうちょきん)とは、全国各地にある郵便局や簡易郵便局(以下「郵便局」)を訪問し、証拠として郵便貯金通帳に預入、払戻等を行い、タカラ印、局名印、主務者印等の取扱印字してもらい旅行の記念にしたり、あるいは印字や押印などの貯金記録を一種のコレクションの対象とする趣味。
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[編集] 趣味の発祥
もともとバスガイドやライダー、鉄道旅行者に口コミで広がっていたが、種村直樹の著作で紹介されたことで一気に広まり、1991年に郵貯ラリー協会が「郵貯ラリー」を開始するなど、郵政省(当時)からも認知を得た。
[編集] 内容
[編集] 基本的なスタイル
基本なスタイルは郵便貯金・郵便振替事務を行う郵便局の窓口営業時間中(多くの郵便局の貯金業務は平日9時から16時までで、愛好家はこの7時間を「有効時間」と呼ぶ)に訪問、各種郵便貯金への預入又は払戻もしくは新総合通帳への本人払込み等を実施して、郵便貯金通帳へ当該局の郵便局名印及び主務者印を押印してもらうものである。
[編集] 一局の定義
どのような場合にその郵便局を訪問したとみなすか(一局の定義)については愛好者によって考え方が異なる。
[編集] 主な見解
- 預入以外に払戻も訪問と認めるか否か
- ATMでの預入を認めるか否か
- 局名改称前後を別局とみなすか否か
- 読みの変更・字体変更を改称(別局)とみなすか否か
- 局舎移転前後を別局とみなすか否か
- 局番号変更前後を別局とみなすか否か
- 貯金業務を扱わず為替業務のみを扱う局を認めるか否か
[編集] 見解に関する具体例
定義2については、かつての金沢中央局金沢駅内分室(現在は金沢駅内局開局に伴い廃止)や名古屋郵便集中局が、貯金の窓口取り扱いはないもののATMでの預入に対して局(分室)名の入ったゴム印のみを押印していたケースがある。また、近年、硬貨預入可能のATM設置局が増え、前述の定義2を可とする愛好者であれば、貯金窓口業務時間外でも一局訪問とできるようになった。ATMの預入可能時間は、最大で平日が8:00~21:00、土休日が9:00~17:00である(ただし、1月1日~3日は全局休止。また、一部の局で取扱時間が違ったり、ホリデーサービスを行っていない例もある)。
ここ数年は中央省庁再編に伴い、省庁や機関の改組・改名が相次ぎ、その余波でこれら施設内にある郵便局も改称した。例えば「大蔵省」から「財務省」に変わる前日(2001年1月5日)の「東京中央局大蔵省内分室」には、貯金や消印のコレクターで長蛇の列ができた。これは定義3の域を超えて、一種の記念行動であろう。
定義5・6については、昨今の市町村合併とも絡んでくる。2005年2月に長野県山口村が岐阜県中津川市に編入された際には、旧村内の2局は「移転」も「改称」もせず局番号のみ岐阜県のものに変更となった。また愛・地球博郵便局のように時期を限定して臨時設置される郵便局もあり、今後預入の定義も更に複雑化することが予想される。
[編集] 類似行為
「貯金」と呼ばれてはいるが、多くの場合「金を貯める」ことよりも、郵便局のある地域に訪問した記念とするのが主目的である(山奥の局へ100円貯金しに行くのにタクシー往復で3000円使った、との笑い話がある程)。旅行貯金に関する書籍を多く発行している種村直樹は、現地への訪問を必要とするという共通点を元に寺社の朱印集め(集印)、鉄道駅・道の駅スタンプラリーといった趣味に似通っていると分析している。
また、通帳にゴム印を押すという点に着目すれば銀行や農協でも旅行貯金が可能である。また、同じような趣味で「りそなめぐり」、「みちのくめぐり」がある。詳しくはスタンプラリー#りそなめぐり、みちのく銀行#みちのくめぐりを参照。
[編集] 愛好者の名称
もともとは旅行に付随する行為であるため実行者に対する呼称はないが、旅行貯金にのめり込む内、旅行貯金自体を目的とした旅行を行うようになることがある。このような旅行を俗に貯金旅行あるいは貯行旅金と呼び、実行者は「(旅行)貯金者」・「ぱるらー」等と自称することがある。
[編集] 趣味を取り巻く現状
[編集] 利用不可の郵便局・利用許可が必要な郵便局
宮内庁内郵便局(東京都千代田区の皇居内)の利用は、宮内庁と皇宮警察に勤務している職員などに限られている。一般人が利用することはできない。ただし、かつて郵貯ラリーが行われていた時に、1日ラリーの優勝者が特典として入構し、同局で貯金できたこともあった。
このほかにも、施設内にあるため一般人の利用は許可を必要とする郵便局がある。例を挙げると、東京中央郵便局財務省(旧大蔵省)内分室(東京都千代田区)などがある。
[編集] タカラ印
局名印については、局名以外に観光フレーズ、イラスト等を同一印面に入れた「タカラ印」が、上記「郵貯ラリー」とも関連して人気を集めた。
郵便局によっては、一局で複数のタカラ印を持ったり、数色を用いたカラフルな印面を用意したり、或いは印面を数行にわたらせ、大きなイラストを局印としたりする所も現れた。和歌山県内や小豆島の郵便局は、そのほとんど全局がタカラ印を有している。
タカラ印については画像:旅行貯金 主務者印・タカラ印.jpgも参照。
[編集] オフライン
郵便貯金等のオンラインシステムは昭和40年代に本格導入され、大部分の普通郵便局・特定郵便局では昭和50年代に完了し、地方部や局舎構造上、権利関係上困難だった郵便局も1996年(平成8年)頃に導入が完了した。簡易郵便局では平成年代に入っても常設オフライン局が依然として存在していたが、1993年(平成5年)頃には全国で10局程度と希少になり、ごく一部の熱狂的な愛好者にとっては「聖地」となっていた。なお、常設オフライン局で預入するには、通常・定期・定額貯金の通帳・証書でもオフラインでの預入や払戻は可能であるものの、局から貯金事務センターの貯金原簿との処理を行うのを待つまでは、その間はほかのオンライン局での預入等を行えないので、他局のオンラインのCTMで再入力処理を行う必要があり、その処理には、事前に通帳に併設された郵便振替口座や、キャッシュカード、自動払込みなどのオンライン処理関連登録を廃止しておくなどの準備を必要とした。 しかしながらその数は徐々に減少し、2005年3月31日限りで東の川簡易郵便局(奈良県上北山村)が廃止、的場簡易郵便局(山形県山形市)が一時閉鎖となり、現在は常時開設のオフライン局は存在しない。
[編集] 特設オフライン・オフ扱常用局
現在、普通郵便局と特定郵便局における郵便貯金・郵便振替等の業務はオンライン化が達成されている。ただし、これはオンライン化したというだけであって、常に全局が完全にオンラインであるというものではなく、災害はもとより、近年では入居ビルのメンテナンス等により停電の場合があるので、その場合は電話で他局に指示して代行処理を行うかオフラインでの取扱いがなされる場合があり、今後も郵便貯金システムが変更されるなり制度改正がない限り、現業でオフラインでの取扱が無くなることはない。
また、岩手県庁内郵便局(岩手県盛岡市)のような超大口や公金等の特殊な取扱、多数の旅行貯金者の訪局により、一時的に一台のCTM等で長時間の処理をすることが多くても、公社の基準によりに基づき経費節減の一環としてCTMや職員削減などなされた結果、郵便貯金等の業務が遂行不能となり日常的にオフ処理をしている郵便局も存在する。
[編集] 簡易郵便局
簡易郵便局は、全局でオンライン化された。 しかし、オンライン化は振替・貯金業務の一部のみでしかなされず、貯金非取扱で為替・振替のみ取扱の簡易局はオフラインのままである。
また、オンラインとは言っても、CTMでは最小限の処理しかできない。例えば、通常払込みは、払込書を貯金事務センターに郵送して行なう。郵便貯金を取扱わず郵便振替を取扱う簡易局において電信為替・電信振替をする場合、その簡易局は電話で監督局(多くは集配普通局)にCTMでの代行入力を依頼して行うので、電話の通信に障害があった際利用できないことや、処理の大幅な遅延などが日常的に存在するため、利用の際には十分注意する必要がある。
[編集] 新総合通帳への本人払込み
郵便貯金の取扱を行わない簡易郵便局であっても郵便振替を取扱っている場合、全国の局(シティポストを除く)において新総合通帳への本人払込みが可能である。
- 新総合通帳では、通帳の郵便振替口座へ本人払込みを行うことで「自動移替」が行われ、通常・貯蓄貯金へ預入となる。本人払込みは「郵便振替電信振込依頼書」に新総合通帳またはキャッシュカードを添えて行う。料金は無料である。また、払込金額は1円以上1円単位となる。
- シティポストはオンラインであるが、電信扱いの為替・振替などの業務は取扱っていない。
[編集] 横型通帳の導入と主務者印
2000年1月4日にこれまでの縦型通帳に代わって、横型通帳が登場した。横型通帳の普通郵便貯金項では主務者印欄が廃され、1ページ24行×7ページ(後に9ページ)の構造。縦型通帳の生産は終了し、在庫限りとなった。縦型通帳を求めて遠方の郵便局へ赴く者、或いは通常貯蓄貯金通帳(貯蓄型I)、(貯蓄型II)は縦型通帳のままだったのでそれに変更する者も現れた(現在、貯蓄型の両通帳は統合され1種類になった)。
2003年4月1日、縦型通帳への更新が完全廃止となり、更新は横型通帳に一本化された。横型通帳では主務者印を整って押せないことから、旅行貯金に対する意欲が減衰し、遂には趣味自体を辞めていく人も出だした。それでも熱心な愛好者は、通帳の上下端や預入金額欄などの余白に依頼するなど工夫して、主務者印の蒐集を続けた。
さらに2005年3月11日以降、日本郵政公社が主務者印に関する通達を出し、主務者印そのものを通帳に押してもらえなくなってしまった。
なお、定額貯金・定期貯金の新規預入、通帳更新、住所変更などの場合は、証明印である主務者印を押すことになっている。そのため、ここぞという郵便局で通帳更新したり、或いは通常貯金通帳に預入して局名ゴム印を押してもらい、それとは別に定額貯金または定期貯金をして主務者印を集めている人もいる。その場合、預入金額は一千円以上、千円単位となる。現在、主務者印を押してもらうためには通常貯金通帳の他に定期・定額貯金用通帳も必要となっている状態である。
積立貯金は新規預入、継続預入すべてに主務者印が押されるが、窓口でしか預入ができず、簡易郵便局は全局非取扱いな上、払戻時に通帳が回収されるため旅行貯金に向かない。
現状でも局名ゴム印の押印は続いているため「主務者印にこだわる必要はないのではないか」という意見もあり、同じ趣味をしている人でも主務者印に関する見解は異なっている。一方主務者印に重きを置く人は「一部の局で主務者印と局印とで字体(新字体と旧字体、異体字など)が異なるケースがあり、正式な局名字体がどちらなのか、改称されたか否かの判別が曖昧になる」などを理由に挙げている(字体・読みの変更改称は実際にあり、公式サイトでも案内されている)。部外者から見ればどうでもいい事であろうが、一部の旅行貯金者にとって、これには「一局の定義」や「自分にとって○百局目/○千局目がどこか」「◇◇県は完訪になるのか否か」などの事柄も絡むため、1局の誤差を争う極めて重要な問題なのである。
[編集] 大津中央郵便局坂本分室事件
2005年10月24日に設置された大津中央郵便局坂本分室(旧・坂本郵便局)では当初、分室名入りのゴム印を作成しなかったため、初日に訪問したマニアの一部が窓口職員を吊し上げるなどの出来事が発生した。また、定期貯金が定額貯金の用紙で作られているミスも発覚した。 この件に関して「ガゥオー!ガゥオー!吠えて参りました」「教育的指導をした」などとウェブ掲示板に書く者が現れる一方、「あくまで局員の好意により成り立っていることに鑑みて反省するべきである」と書く者もおり、ファンの間では賛否の分かれる大きな話題となった。 なお同月28日時点で、分室名入りのゴム印が確認されている。ちなみに、坂本分室と同時に設置された大津中央郵便局局瀬田分室では、当初より分室名入りゴム印を用意していた。
[編集] 愛好者以外と旅行貯金
[編集] 通常の記念押印
稀に、愛好者のみならず一般の人も記念行動として預入することがある。各郵便局は分室・出張所を除き、取扱局番号(為替コードとも)と称する5桁のコードを持つが、取扱局番号が「11111」や「12345」の郵便局も存在する。なお取扱局番号については郵便局を参照のこと。
[編集] 平成11年11月11日飯田風越郵便局事件
平成11年11月11日木曜日、取扱局番号11111の飯田風越郵便局(長野県飯田市)には、「1」並びの預入をしようと約200人の行列ができ、1日で1,000人以上訪れた。3台分しかない駐車場はこの行列に使われたため、路上駐車する車が絶えず、警察が取り締まりに来る騒ぎにもなったが、局員および近隣の店舗などの協力によりキップを切られることは回避された。この日、飯田風越郵便局の取扱件数は約2,600件で、これは普通郵便局である飯田郵便局の1週間分の業務量となった。貯金窓口での取扱い時間16:00を過ぎた分については、局預かりとし後日郵送することで対応した。同局を訪問した人には愛好者以外も多かったが、これはぞろ目の話がテレビのワイドショーで紹介されたことによる。画像:旅行貯金 11111.jpgも参照。
なお取扱局番号12121を持つ新潟沼垂郵便局は翌年平成12年12月12日にぞろ目となったが、通常よりやや多い程度の客数で、業務に全く支障はなかったという。次回のぞろ目は平成22年2月22日月曜日、取扱局番号22222の亀山井田川郵便局(三重県亀山市: JR関西本線・井田川駅前)だが、現状の印字パターンのままだと年月日欄が「22-02-22」となる見込みのため、飯田風越郵便局のように完全なぞろ目とはならない。
[編集] 旅行貯金に関連する著書
- 旅のついでに3334局 日本縦断「郵便貯金」の旅(種村直樹著、徳間書店、1995年)
- ただいま3877局 気まぐれ郵便貯金の旅(種村直樹著、自由国民社、1997年)
- 郵便局リスト(NR編、通販店舗「zakkado」、2005年)
[編集] 参考文献
[編集] 本文
[編集] 平成11年11月11日飯田風越郵便局事件
- 局めぐ記(36)~1並び (平成11年11月11日)
- みんなの局めぐ記~それぞれの11.11.11
- 静かな飯田の街は大騒ぎ!11111騒動始末記
- 11111大騒動
- 11111:飯田風越郵便局遠征
- 11111:飯田風越郵便局
- 通算7000局踏破
- 平成11年11月11日狂騒局
- 過去のふるかわくんの日記(平成11年11月)
- 111111 いちいち IIDA Part 3
- 私の11年11月11日
- 長野県飯田市飯田風越局訪問記 平成11年11月11日
- 「飯田風越郵便局」の、究極の「1」並び。
[編集] 関連記事
- 郵便趣味
- 消印
- 風景印
- 郵便局巡り
- 郵貯ラリー協会
- 全国郵便局名録
- 郵便為替
- 郵便振替
- 例の処理(総合オン、電信振替)
- 領収書
- スタンプラリー
- 住基ネット巡り(市町村役場巡り)
- ATM(現金自動預払機)
- CTM(貯金窓口の端末機)
- レンタサイクル
[編集] 外部リンク
- 郵便局の開局情報 日本郵政公社のサイト。郵便局の設置・移転・改称・一時閉鎖などを紹介している。