歳差
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歳差(または歳差運動)とは、自転している物体の回転軸が、円をえがくように振れる現象である。
[編集] 物理現象としての歳差
一般に、剛体が角運動量を持つとき、その回転軸が慣性主軸で無いならば、外力が無くても回転軸は慣性主軸のまわりを振れ回るような動きをする。これを自由歳差運動という。(地球の自転運動では、これは極運動の自由章動成分として現れる。)
回転軸が重心を通る慣性主軸であれば回転は安定的だが、 回転軸をひねるような向きのトルクを与えると、自転軸が円を描くように振れる。典型的な例は回転するコマの首振り運動である。歳差運動をする物体の自転軸はすりこぎを擦るように両端が円を描いて回転する。
コマがこのような運動をするのは、コマの自転の角運動量ベクトルに対して、コマに働く重力によるトルクが軸を倒す方向に継続的に加わる結果、自転の角運動量ベクトルが大きさを変えずに向きだけ回転するためである。これは、中心力によって等速円運動している物体が、継続的に加わる中心力によって運動量ベクトルの大きさを変えずに向きだけを回転させているのと同じ関係である。
[編集] 天文学における歳差
天文学においては、地球の歳差運動、すなわち、地球の自転軸がコマの首振り運動のような回転をしているために春分点・秋分点が黄道に沿って少しずつ西向きに移動する現象のことを指して歳差(さいさ)と呼ぶことが多い。この歳差の周期は約25800年である。
この地球の歳差運動の原因は、地球の形状が赤道部分の膨らんだ回転楕円体であるため、太陽や月の重力による潮汐力によって、赤道部分の膨らみを黄道面と一致させようとする方向にトルクを受けているためである。
この歳差のために、天の北極は天球上で黄道北極を中心とする円を描く。現在の北極星はこぐま座α星だが、紀元前2000年頃には天の北極はりゅう座α星(トゥバン)の近くに位置していた。西暦14000年頃には天の北極はこと座のベガ近くに移動する。
歳差による春分点の移動を最初に発見したのは紀元前150年頃のギリシャの天文学者ヒッパルコスである。彼は黄経180度・黄緯0度にほぼに近い位置にあるおとめ座のスピカを使い、皆既月食の時に月とスピカの角距離を測った。日食や月食は黄道と白道の交点でしか起こらないので、日食・月食時の月や太陽は必ず黄道上にいる。従ってこの時のスピカとの角距離はそのままスピカと月または太陽との黄経の差になる。ヒッパルコスはこの黄経の差を、彼の時代より約150年前のティモカリスが作った星表と比較して、黄経の値が変わっていることを発見した。彼はスピカ以外の恒星についても同様にずれていることを見つけ、このずれは恒星の運動によるものではなく、黄経の基準である春分点自体が移動しているためであると結論した。
[編集] 関連項目
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