稲荷寿司
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稲荷寿司(いなりずし)は、油揚げの中に飯を詰めた寿司。名前は、油揚げが稲荷神の使いであるキツネの好物とされたことに由来するとする説がある。しかし、肉食のキツネが油揚げを好物とすることは不自然なので、これと別に、稲の神様である稲荷神にそなえる具物として、米俵を象徴した物が「稲荷寿司」と呼ばれ、ここから逆に狐の好物が油揚げとなった見る考えもある。「お稲荷さん」「揚寿司(あげずし)」「きつね寿司」とも。「しのだ寿司」の名称は、信太の森に住んでいたとされる葛の葉狐に由来する。
甘くあるいは甘辛く煮付けた油揚を袋状に開き、寿司飯(酢飯)あるいは炊き込みご飯や混ぜご飯を詰める。 その上から煮あげた干瓢などで縛ることもある。ご飯に具が混ざるいなり寿司は西日本に多いとされる。
米俵に模して四角に仕上げたものと狐の耳に模して三角形に仕上げたものがある。一般に関東では俵型、関西では三角形が主流とされている。
いわゆる高級な寿司屋ではあまり見られないが、庶民的な店やテイクアウト専門の寿司屋では 人気の寿司。行楽の弁当などにも良く登場する。
愛知県豊川市にある日本三大稲荷の一つ、豊川稲荷の門前町が発祥の地である。創業100年を越す店である「門前そば 山彦」定番メニューの「元祖いなほ稲荷寿司」が有名。もうひとつの店、松屋でも稲荷寿司を出している。いずれも稲荷寿司の専門店ではない。普通、稲荷寿司の油揚というと、醤油と砂糖で甘辛い味付けがされているが、ここの油揚は味醂を煮切ってつかったような薄らとした味付けで、稲荷寿司の一般のイメージとは若干異なっている。最近、町おこしの運動の一環で、伝統的な稲荷寿司に手を加えて、味噌カツ稲荷、鶏牛蒡稲荷とかいった変わり稲荷寿司も出したりしている。また稲荷寿司の名称に準えた鰻荷寿司という新名物もある。
埼玉県熊谷市(旧・大里郡妻沼町)名物のいなり寿司は通常の倍ほどの長径があり、これは江戸時代のいなり寿司の形を反映しているとされている。
いなり寿司と海苔巻きを組み合わせた折り詰めは助六寿司と呼ばれる。歌舞伎十八番「助六由縁江戸桜」の主人公、助六の愛人の名が揚巻であることから、 油揚げとのり巻きの洒落から名付けられている。
[編集] 稲荷寿司の数え方
- 稲荷寿司も握り寿司の伝統的な計数方法と同様に2つで1貫と計数するのが正しいとされるが、握り寿司とは分けて1個、2個と計数する寿司店もある。
- 別の数えかたとして、様々な具を詰めて大きさが大きくなった稲荷寿司は1個でも1貫とする場合がある。