スパイ
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スパイ (Spy) とは敵対勢力などの情報を得るため、合法違法を問わずに情報入手や諜報活動などをする者の総称である。工作員(こうさくいん)、間諜(かんちょう)、間者(かんじゃ)、密偵(みってい)とも呼ぶ。“スパイ”と呼ぶのは敵方の者のみで、味方の者はエージェント(代理者)と称する言い方もある。世界最古のスパイは神話に登場する蛇と言われている。
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[編集] 概説
政治・経済・軍事機密・科学技術などの情報をいち早く入手することは戦時・平時を問わず戦略上重要であり、この種の行為は古代から行われてきた。世界各地の神話や古文書にもしばしば描写される。孫子においても、「用間」としてわざわざ一章がたてられている。内容は非常に具体的であり、離間工作の方法、敵の間者を二重スパイとして活用する「反間」などの手法が詳細に記されている。日本の忍者もスパイの範疇に属する。
SPYは、espy(見つける、探し出す)と同じで古期フランス語でespion(見張る者)の意味がある。espionage(諜報活動:現仏語)の語源。印欧語で「見る」を意味する語幹「spek」に由来する。
近代以降、各国はスパイ網を組織化・巨大化させ、諜報活動を繰り広げた。特に第二次世界大戦後の東西冷戦期には、世界各地で激しいスパイ活動が行われ、多くのスパイ事件が発覚してもいる。この状況は、米ソ二極体制が終結した現在でも変わってはいない。一般に、法律で取り締まりの対象になるスパイは内部情報を持ち出す関係者で、その情報を買い取る外国政府の情報機関員(大使館に所属し外交特権を持つ書記官・駐在武官をしていたりする)は「ケースオフィサー」という。
ケースオフィサーの任務と、スパイの任務は異なる。ケースオフィサーが行うのは、主に敵側の情報に近づきやすい人間や、有用な人間をスパイとして獲得する獲得工作と、自らの下にいるスパイの管理、情報の取りまとめと本国への報告である。敵側の暗号担当者であったり、電信員であったり、あるいはマスメディアの人間、軍人に近づいて友好的に接し、次第にスパイとして育てあげていくのである。場合によっては自らが外国のスパイとして働いていると自覚すらさせないケースもある。スパイの任務は、まさにその立場や能力を活かし、ケースオフィサーの望む情報や人間、暗号機、暗号書や重要な機密文書などを直接獲得してくることである。多くの場合、海外に赴任したケースオフィサーは赴任国の現地人を使ってスパイ網を作り上げることにまい進する。また、ケースオフィサーの管理を経ずに直接、単独で目標国に潜入するスパイもいる。こうしたスパイは、完全な地下活動や秘密の拠点に長期間潜伏する者もいるが、堂々と偽の経歴を利用して該当国で一定の社会的地位を占めることもある。このような潜入の場合は、しばしば情報収集だけでなくプロパガンダの流布など、積極的な工作活動を行う場合もある。
小説、映画の影響により派手な活動が連想されがちであるが、古典的表現である「外套と短剣」に表されるように、実際のスパイは実に地味な活動をしている事が多く、本来別の存在である。忍者や007シリーズ等、大衆向けに膾炙したフィクションが先入観の原因と考えられる。このような破壊工作などは実際には軍特殊部隊によって行なわれていることが多い。たとえば戦場において工作活動や味方とするべき非合法の組織作りを担当するのは往々にして軍の機関である。太平洋戦争における陸軍中野学校出身のスパイ達の活動などが例としてあげられる。しかし、地味な活動だけではなく、時にはスパイも暗殺、破壊工作、拉致などの任務に就く事もあり、スパイによって引き起こされた事件が多くある。また、敵施設への潜入や盗撮、窃盗なども行うことがあり、暗号機や暗号書などがその標的になることが多い。
しかしながら、民主主義の大国の間では映画やフィクションから伺えるイメージと実際のスパイのイメージはかなり異なる。例えば情報収集活動は、潜入や暗殺、尾行などの直接行動のみで行われるわけではない。十分な情報公開がされている国においては、基本的に情報公開の原則から、合法的な資料を合法的に調べれば目的の情報を得られることがあるからである。しばしばエリント、イミント、ヒューミントと並んでオシントと呼ばれる諜報の手法である。具体的には、対象国の軍の編制を割り出すために、対象国の新聞社交欄、ニュース、移動の断片などを丹念に集積し、分析するといった手法である。細かいデータを少しづつ集めて分析するだけでも、相当な精度の情報が得られることがある。ただ、そうした活動はおもに諜報機関が組織として情報を収集する手法のひとつであり、スパイが個々人で行うわけではない。窃盗や盗撮と同様によく行われる手法として、目的とする情報がある機関の職員に、異性の諜報員が近づき、恋愛感情につけ込んで情報の取得を目指すリスクの比較的少ない手法もある。
スパイをテーマとした小説や映画、漫画などは、冷戦期に盛んに送り出されたものの、近年はやや下火になりつつある。
また危険な任務が多いのに基本的に給料が安い(ケースオフィサーは公務員 内通者に至っては報酬が贋金で支払われたりする事も)為、現在の先進国に限って言えば人気がなく進んでやろうとする人間はまれである。
[編集] 非軍事のスパイ
プロ野球のスコアラーが、次の対戦相手の戦力・戦術分析の為に試合を観戦したりする事から、「スパイ」と表現される事もある。
企業における産業の技術情報などのスパイ行為については産業スパイと言う。
ソニーのゲートキーパーや、最近ではピットクルー社が事業として行っている「インターネット上のブログや掲示板で、特定の企業等の擁護や宣伝を行う者」を「工作員」と呼ぶことがある。また、「ガーラ」社や「イー・ガーディアン」のようにネット監視をして契約先に通報する行為も、広い範囲で考えると「工作員」と言えるかもしれない。
[編集] 現代の諜報機関
- 陸軍中野学校(大日本帝国)
- 公安調査庁(日本)
- KGB(ソ連・国家保安委員会)→現・SVR(ロシア・対外情報庁)
- GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)
- CIA(アメリカ・中央情報局)
- DIA(アメリカ・国防情報局)
- CIC(アメリカ・陸軍情報部)
- ONI(アメリカ・海軍情報部)
- OSI(アメリカ・空軍情報部)
- NSA(アメリカ・国家安全保障局)
- SIS=MI6(イギリス・軍情報部)
- モサド(イスラエル)
- SVR(ロシア)
- SDECE=DGSE(フランス・対外治安総局)
- KCIA=NIS(韓国・国家情報院)
- BND(ドイツ・連邦情報局)
[編集] 防諜機関
[編集] 実在したスパイによる回顧録
- シャンペン・スパイ
- スパイのためのハンドブック
- 暗号名イントレピッド
[編集] 実在したスパイ
[編集] ソ連・ロシア
- リヒャルト・ゾルゲ:ソ連GRU。駐日独大使館
- ナウム・エイチンゴン:ソ連内務人民委員部
- ジョージ・ブレイク:ソ連KGB。イギリス外交官。ケンブリッジ大学卒。
- キム・フィルビー:ソ連KGB。MI6高官。ケンブリッジ5人組
- ドナルド・マクリーン:ソ連KGB。イギリス外交官。ケンブリッジ5人組
- ガイ・バージェス:ソ連KGB。ケンブリッジ5人組
- アンソニー・ブラント:ソ連KGB。ケンブリッジ5人組
- ジョン・カーンクロス:ソ連KGB。ケンブリッジ5人組
- ボグダン・スタシンスキー:ソ連KGB
- オルドリッチ・エイムズ:ソ連KGB・ロシアSVR。CIA高官。ソ連に徴募された最高位のアメリカ人
- ロバート・ハンセン:ソ連KGB。FBI職員。オプス・デイ信者
- ルドルフ・アベル:ソ連KGB。別のスパイの自首で逮捕されるもU-2撃墜事件で捕虜になったパイロットと交換釈放。
[編集] 東ドイツ
[編集] チェコスロバキア
- カレル・ケヘル:チェコスロバキア国家保安庁。CIA内部への浸透に成功
[編集] イギリス
[編集] フランス
- シュタイバー フランス
[編集] イスラエル
[編集] 北朝鮮
- 李善実:朝鮮労働党対外連絡部。北朝鮮最高位の女スパイ
- 金用珪:朝鮮労働党対外連絡部。KCIA部長李厚洛の誘拐を計画
- 金東植:朝鮮労働党対外連絡部。いわゆる「新世代」間諜
- 宋斗律:朝鮮労働党統一戦線部。韓国の在独社会学者、教授
- 金賢姫:朝鮮労働党対外情報調査部。大韓航空機爆破事件の爆破犯
- ムハンマド・カンス:朝鮮労働党対外情報調査部。フィリピン国籍に偽装し、韓国のタングク大教授となる。
- チェ・スンチョル:朝鮮労働党対外情報調査部。日本人拉致犯
- 金世鎬:朝鮮労働党対外情報調査部。日本人拉致犯
- 辛光洙:朝鮮労働党対外情報調査部。日本人拉致犯
- 安明進:朝鮮労働党作戦部。韓国に帰順
[編集] 日本
[編集] スパイをテーマとした作品
[編集] ゲーム
- メタルギアシリーズ
- スパイvsスパイ
- スパイフィクション
- Splinter Cell
- エレベーターアクション
[編集] 小説・映画
- ジョゼフ・コンラッド『密偵』
- ジョン・バカン『三十九階段』
- W・サマセット・モーム『アシェンデン』
- エリック・アンブラー『恐怖の背景』『あるスパイへの墓碑銘』
- グレアム・グリーン『密使』『恐怖省』
- アリステア・マクリーン『最後の国境線』
- イアン・フレミング『007シリーズ』
- ジョン・ル・カレ『寒い国から帰ってきたスパイ』『ジョージ・スマイリーシリーズ』
- レン・デイトン『イプクレス・ファイル』
- ケン・フォレット『針の目』
- フレデリック・フォーサイス『神の拳』
- ロバート・ラドラム『暗殺者』
- 篠田正浩『スパイ・ゾルゲ』
- 増村保造『陸軍中野学校』
- キム・ヒョンジョン『二重スパイ』
- スパイ大作戦/ミッション:インポッシブル
- 豪甦/NOC CIA見えざる情報官
- ドロシー・ギルマン『おばちゃまは飛び入りスパイ(ミセス・ポリファックス)』シリーズ
- モルガン・スポルテス『ゾルゲ 破滅のフーガ』
- トニー・スコット 『スパイ・ゲーム』
[スパイVSスパイ米ソ情報戦の内幕 新潮文庫] [世界を騒がせたスパイたち上下 教養文庫]
- 西村京太郎 『アナザーウェイD機関情報』
[編集] 漫画
[編集] 楽曲
[編集] 書籍
- 明石一郎 『秘密戦-在日謀報機関の活動-』
- 中薗英助 『スパイの世界』(岩波新書)