タイラギ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タイラギ | ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分類 | ||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||
Atrina pectinata japonica | ||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||
タイラギ | ||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||
- |
タイラギ(玉珧、学名 Atrina pectinata japonica)は、イガイ目 ハボウキガイ科に分類される二枚貝の一種。
目次 |
[編集] 形態
殻長30cm以上、殻高20cm以上になる大きな貝である。貝殻は一角がとがった三角形で、内側はかすかな真珠光沢がある。外側にはうすい放射肋がある。殻は壊れやすい。 殻が大きいだけに動物体も大きい。2つの閉殻筋(貝柱)のうち一つはとがった一角にあり、直径は1-2cmほどしかないが、もう一つの閉殻筋は殻の中央部にあって、直径が4-5cmほどもある。外套膜(ヒモ)はクリーム色から橙色をしており、長くて分厚い。足は細くて小さい。
[編集] 日本での生態
東京湾以南の、水深20mくらいまでの浅い海に分布する。貝殻のとがった方を下にし、泥底に刺さるようにして生息する。さらに足の付近から、緑褐色で長さ10-20cmほどの、絹糸のような足糸をたくさん出して砂粒や小石をくっつけ、体を固定する。砂泥の上には殻のてっぺんがわずかに顔を出すのみである。
産卵期は夏で、産み出された卵は海中に放出され、同じく放出された精子と受精する。ふ化した幼生はしばらく海中を漂いながら成長し、やがて着底する。成長は早く、2年後には殻長が20cmを超える。
有明海では1990年頃まで、潜水服を装着し、鎌のような漁具を使って砂泥底のタイラギを次々とひっかけるという漁が行われていた。多量に漁獲されたタイラギは食用として全国に出荷されていたが、近年はほとんど漁獲されなくなった。特に諫早湾沿岸域では1993年から休漁という深刻な状況が続いており、諫早湾干拓事業との関連を指摘する声も多い。他の産地ではさらに早い時期に個体群の崩壊が起きていることが多く、今日では健全な個体群は周防灘ぐらいにしか残っていない。
[編集] 食材
大きな閉殻筋(貝柱)を薄切りにして食用にする。用途は刺身、寿司種、焼き物、汁物など多様である。生では柔らかくて甘いが、火を通すと歯ごたえと旨みが増す。また、外套膜(ヒモ)も焼き物などで食べられる。 なお、流通の際殻の割れているものは値が落ちる。
[編集] 別名
エボウシガイ、タイラガイ(平貝)、テエラゲエ、ババトリ(関西地方)、バチガイ(北海道)、ハシラ、タチガイなど
- 「ババトリ」とは、糞便をすくい取るのにタイラギの大きな貝殻を使っていたことに由来する。
[編集] 近縁種
リシケタイラギ Atrina pectinata lischkeana
- 殻の表にうろこのような突起がたくさんある。タイラギよりも大型で砂底を好むが、タイラギによく似ているので同種として扱われる場合が多い。タイラギとリシケタイラギは未だ分類が整理されていないため、これからの整理が待たれる。
ハボウキガイ Pinna bicolor
- タイラギに似ているが細長い。砂底に刺さって生活するが、貝殻の半分くらいが砂底の上に出ている。タイラギと同じく閉殻筋を食用にするが、閉殻筋が小さい。また外套膜は薄く、強いて食用にはしない。