フォード・プローブ
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- 1.アメリカ、フォード・モーター製のクーペ型乗用車。以下に記す。
- 2.同社が1970年代から試作した空力的デザインのコンセプトカーシリーズ名。「プローブI」から「プローブV」までが存在する。→フォード・プローブ(コンセプトカー)
フォード・プローブはかつて生産されたフォード・モーターとマツダの共同開発のクーペである。マツダ・カペラがベースであり、ミシガン州フラットロック市にある両社の合弁工場AAIで生産された。いわゆるセクレタリーカーの代表的車種である。
日本には初代、2代目とも輸入され、2代目の後期モデルは北米フォード車初の右ハンドルモデルであった。
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[編集] 歴史
[編集] 初代(1988-1992)
ターボチャージャーと自然吸気、2種類の2.2リッター直列4気筒12バルブSOHCエンジン及び3リッターV型6気筒OHVエンジンが搭載された。5MTと4ATの選択が可能で5MTでは、同時期のポルシェ911カレラより、ゼロ発進は優れており1速、2速ではローギヤの印象。時速100㎞でのエンジン回転数は2600rpm程度だった。
ヒドゥンピラー処理のサイドからリアへ回り込むラップアラウンドウィンドウ及びリアハッチゲート、リトラクタブル・ヘッドライトを持つそのスタイルはスタイリッシュであるが、同時期に発売されていたトヨタ・セリカ(ST/AT160系)も同様のスタイルを持っており非常に似ている。このヒドゥンピラーを持ったラップアラウンドウィンドウデザインは当時の流行であり、他にもダイハツ・リーザやマツダ・エチュードなど、80年代後半にはこのようなデザインの車が多く見られる。
ハンドル位置は左のみで、ヨーロッパ大陸諸国にもかつてのフォード・カプリの事実上の後継車として輸出された。GDプラットフォームを採用しており、マツダ・カペラC2と姉妹車の関係になる。日本でのプローブへの部品供給は現在でもマツダが行っている。ヨーロッパや米国では大ヒットとなり、現在でも多数のチューニングパーツが販売されている。デザイナーは現地駐在の日本人である。
この初代プローブは元々4代目フォード・マスタングとして開発されていたと言われている。しかし、マツダとの共同開発車、駆動方式がFF、V8エンジンの搭載がない等、マスタングのコンセプトとは相容れない仕様に対して社内外からの猛反発を浴びることとなった。そのため急遽マスタングではなくフォード・EXP後継の新規車種として販売されることが決まったという経緯がある。
[編集] 2代目(1993-1997)
1992年9月に1993イヤーモデルとしてデビュー。2.5リッターV型6気筒DOHCエンジンと2リッター直列4気筒DOHCエンジンが搭載された。どちらもマツダ製のエンジンである。ボディサイズも拡大され、ラップアラウンドウィンドウやリアハッチゲート及びリトラクタブル・ヘッドライトという先代のイメージはそのままに、よりグラマラスなデザインが施されたことが特徴。その流麗で女性的なボディラインは一部から非常に高く評価され、現在でも根強いファンが存在する。またデビュー年の1993年には米・モータートレンド誌の主催するカーオブザイヤーにも輝いた。
後期型には前述のように右ハンドル車が設定され、イギリスやオーストラリア等でも販売された。日本市場へは1992年9月より左ハンドルモデルが輸入開始。しかし初代同様、海外では好評であったにも関わらず日本での売れ行きは芳しくなく、1994年6月より右ハンドルモデルに輸入が切り替えられても状況は変わらぬまま1997年に販売を終了した。
GEプラットフォームを採用しており、マツダ・MX-6とは姉妹車の関係となる。しかしMX-6に採用された4WSはプローブには採用されていない。2.5リッターV6エンジンも基本的には同じものだが、プローブに搭載されたKL型はMX-6に搭載されたKL-ZE型と比べて常用回転域でのトルクを重視したセッティングとなっており、KL-ZE型が最大出力200ps/6500rpm、最大トルク22.8kg・m/5500rpmであったのに対して、KL型は最大出力165ps/5600rpm、最大トルク22.1kg・m/4800rpmとなっている。
[編集] 後継車種
プローブは2世代でモデル消滅となったが、1999年から発売されたマーキュリー・クーガーは事実上のプローブ後継車である。またプローブはマーキュリーブランドでの姉妹モデルは存在しなかったが、逆にこのクーガーの姉妹モデルとなるFF2ドアハッチバッククーペはフォードからは発売されていない。ただしフォードブランドでは1998年からエスコートZX2というFF2ドアノッチバッククーペが販売され、これがフォードブランドとしてのプローブ後継の位置付けとされていた。しかしエスコートZX2はその名の通りエスコートをベースとした車であり、プローブより一回り小さくエンジンも2リッター直4DOHCのみである。
クーガーは日本へも近鉄モータースを通じて正規輸入されたものの、プローブと比較してかなり高い価格設定や近鉄モータースの販売網の少なさなどもあり、プローブ以上に売れ行きは芳しくなく見かける機会は滅多にないほど希少な車となっている。またクーガーのヨーロッパ販売モデルはマーキュリーブランドではなくフォードブランドで販売された。
このようにクーガーやエスコートZX2はプローブの後継として登場したものの、アメリカでのパーソナルクーペ市場の冷え込みは激しくなっており、この2台も例に漏れず売れ行きは芳しくなく、クーガーは2002年末に、エスコートZX2は2003年末に生産中止となった。そのため現在プローブの後継となる車種は存在していない。