プラズマディスプレイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
プラズマディスプレイ (PDP, Plasma Display Panel) は放電による発光を利用した平面型表示素子の一種である。電極を表面に形成したガラス板と、電極および、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成したガラス板とを狭い間隔で対向させて希ガスを封入し、この電極間に電圧をかけることによって紫外線を発生させ、蛍光体を光らせて表示を行っている。
目次 |
[編集] 特徴
自発光型のディスプレイで視野角が広く、応答速度が早い、色純度がよい、比較的大型化が容易(液晶と比べて)という利点を持つが、明るい部屋でのコントラストが低い、擬似輪郭の発生、焼きつきが起こりやすい、消費電力が高い、ディスプレイの発熱、高精細化が困難などといった欠点も併せ持っている。
近年では以前に比べかなり改善され、特に消費電力の点では、平均的な動画像表示時においては、液晶よりも消費電力が小さくなってきている。これは、PDPでは、表示画像によって消費電力が変化する(暗い絵では消費電力が小さい)のに対し、液晶では、バックライトが常に点灯しているため、映像による消費電力変化が無いためである。
[編集] 開発の歴史
動作原理は1966年アメリカ合衆国のD.L. BitzerとH.G.Slottowによりイリノイ大学で発明された。実用化当初はネオンガスの放電による橙色発光の表示装置として、オーエンス・イリノイ社、IBM社やPhotonics Imaging社により商品化され、主としてワークステーションなどの情報表示用ディスプレイに用いられた。
1980年代にはパーソナルコンピュータ用の表示装置としてもプラズマディスプレイが表示パネルが用いられたことがある。これは当時の液晶ディスプレイがモノクロ表示のみで、コントラスト・応答性が悪かったためこれに代わるものとして注目された。しかし、TFTカラー液晶の普及とともにPC分野では一時忘れ去られることになる。
一方、NHK技研では1980年代にカラーPDPの研究開発を進め、毎年夏の公開展示では目玉展示としていた。イリノイ大の方式は電極表面に誘電体を挟んだAC駆動方式であったが、NHKは電極を直接ガスに触れさせるDC駆動方式が輝度および動画性能に優れるとして採用した。しかし、1992年、電極構造と駆動方式を独自に改良したAC駆動方式で高輝度、フルカラー動画が可能な21インチサイズのカラーPDPを富士通、富士通ゼネラルが開発・発表すると、日立・NEC・パイオニアなど多くの会社がAC方式で追随した。 1996年には富士通、富士通ゼネラルが世界初となる42インチフルカラーPDPを開発、1997年11月には富士通ゼネラルが民生用42型ワイドプラズマテレビ、12月にパイオニアが50型としては世界初のの民生用プラズマテレビを発売し、各社とも次世代の大画面の平面テレビとして、デジタルテレビジョン放送・HDTV放送に対応させようと開発競争を開始した。初期のPDPテレビは40インチ程度で市販価格100万円を超える高価な製品で、各社とも「1インチ1万円」を目標にコストダウンに力をいれた。
[編集] 近年の状況
近年では液晶テレビとの熾烈なシェア争いが続いている。今後、SEDやリアプロジェクションテレビの台頭でますます争いは激化するものと見られる。
プラズマディスプレイのパネルを生産できるメーカーは激しい競争の結果淘汰され、日本国内では以下の3社だけである。
- パイオニア(パイオニアプラズマ)
- (自社技術に加え、NECのPDP部門の子会社であったNECプラズマディスプレイを買収した)
日本の各電機機器メーカーはこの3社や韓国のサムスン電子、LG電子等からもパネルを調達してプラズマテレビを製造している。
技術展示会などにおけるプラズマディスプレイの大型化競争はサムスン電子とLG電子が主に争っていたが、松下電器産業が2006年のCESで世界最大となる103V型を発表しこの競争に参戦した。実際にコンシューマー向けに発売されているディスプレイとしては2006年9月現在松下の103型が最大で、価格は日本円で約600万円。
また、最近はPDPの特許侵害で日本企業が韓国企業を訴えるケースがある。
- 2004年4月6日には富士通が韓国のサムスン電子に対して特許侵害で提訴した。(現在は和解済み)
- 2004年11月1日には松下電器産業が韓国のLG電子に対して、アルミシャーシとパネルを接着する熱伝導シートの特許侵害で提訴、LG製パネルの輸入差し止めを申し立てた。これに対しLG側も11月3日には松下を逆提訴、韓国への松下製パネルの輸入差し止めを求めた。
2004年末頃から国内メーカーのプラズマテレビに対する今後の展開に、方向性の違いが鮮明になってきた。ソニーはプラズマテレビよりも今後自社でパネルを開発できる液晶テレビとリアプロジェクションテレビに注力していく方針を表明した。プラズマテレビの製造も従来通り続けていくが、サムスン電子と合弁で設立したS-LCDの本格始動に併せてプラズマテレビは縮小される見通しである。ソニーに引き続き東芝も同様にプラズマを縮小してSEDに注力していく方針を固めた。
これに対し、松下電器産業は、プラズマディスプレイをメイン商品として、大幅に増産、拡販していく方針である。また、パイオニア、日立も増産による拡販を進めている。
2005年4月には富士通が所有する富士通日立プラズマディスプレイの発行済株式の30.1%相当を日立製作所に譲渡し、これによって同社は日立製作所の子会社となった。またその日立が松下電器産業と同年2月にプラズマディスプレイで業務提携を結び、共同で部品調達や共同開発、並びに特許出願会社の合弁設立などを予定している。
S-LCDが第7.5世代の液晶パネル、シャープが第8世代の液晶パネルの製造技術を持ち、60型以上も含めた大型テレビの市場に液晶テレビが参入してくるため、競争はさらに激化するものと考えられる。対抗勢力として米国や中国でシェアの大きいリアプロジェクションテレビもメーカー数社が参入を表明している。
[編集] 関連項目
|
||||
---|---|---|---|---|
静止 | ニキシー管 | 電子ペーパー | LED | |||
ビデオ出力 | VFD | CRT | PDP | OLED | レーザーTV | LCD | DLP | LCoS | SED | FED | NED 映写機 | 自由空間映像 |
|||
3D | ステレオスコープ | ホログラフィー |