侮蔑
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侮蔑(ぶべつ)は、他者を侮り、蔑み、馬鹿にして、ないがしろにする行為の総称である。敵対というより一歩距離をおいて哀れんで見下げている場合は軽蔑(けいべつ)と呼ばれることが多い。軽蔑の意図が薄く敵対的意図が強い場合は侮辱(ぶじょく)と呼ばれることが多い。風刺の意図が強い場合揶揄(やゆ)とも呼ばれる。
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[編集] 侮蔑と社会
侮蔑はされた側に強い不快感を催させ、敵意を起こさせる。このため、侮蔑行為は一般的に、明示的ないし暗黙に社会的に禁止されている。このため、侮蔑行為は秩序が乱れた社会か、さもなくば相当の怒り・敵意がなければ行われることはない。
[編集] 侮蔑と法律
日本では、侮蔑行為を直接に罰する法令が二つある。
また、差別に関して強制力は低いが障害者基本法やあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約などが公布されている。日本国憲法をはじめとして特に労働関係の法令で差別の禁止事項があり、政令や告示等でセクハラなどの職場上の地位を利用した侮蔑行為が禁止されている。これらは労働基準局による一定の強制力を持つ。
[編集] 侮蔑と社会構造
社会的弱者や侮蔑の対象となる行為をしたものが、しばしば集団的に侮蔑の対象となることがある。特定の集団が侮蔑されることにより他の層から孤立し、そのことがさらなる侮蔑を生んで侮蔑される集団が固定化され、社会階層を形成することがある。このような場合を差別階級と呼ぶ。
[編集] 職業への侮蔑
本来なら、職業によって貴賎など決まるはずもない。どの職業も、生活の糧であることには変わりない。だが、日本ではブルーカラーを中心に、特定の職業が侮蔑の対象とされることがある。
[編集] 了解の下での侮蔑的行為
何らかの目的で、両者の了解の下に侮蔑的行為が行われることがある。
- 教育的目的で失敗した人などを叱咤する場合、欠点をあげつらう場合。特に職人や体育会系の場所、あるいは家庭でよく行われる。しかし、いずれの場合にも懲罰的かつ暴力的であるため、前者は時として体罰またはセクシャルハラスメント・アカデミックハラスメント、後者は虐待として問題視され、失敗をなじるより成功を誉めたほうがよいとする意見も広がっている。
- 笑いを起こすことを目的として、一定の了解とお約束にしたがって侮蔑的ないし自嘲的に見える行為を行う場合。芸人は職業的にこの行為を行う。人によって程度は異なるが、侮蔑的表現があまりにも過剰な場合笑えずに引いてしまうこともある。
[編集] 侮蔑の動作
- あかんべえ(あっかんべー)は、舌を相手に向かって出すことで相手を侮蔑する表現である。また片方の目の下まぶたを手の指で引き下げる動作が加わることもある。日本国内において広く通用するが、やや子供っぽい印象を与える。また少なくとも英語圏でも同様の表現があり、顔文字で:-Pあるいは:P(左を上に見て、:を目に見立て、-を鼻に見立て、Pを舌を出した口に見立てる)という表現がある。
- クルクルパーは、手の人差し指だけを立てて2回ほど空中に円を描きさらにすべての指を広げる動作で、相手の知能が足りないことを示す侮辱表現である。日本国内において広く通用し、年齢にかかわらず用いられる。言語的に「クルクルパー」ないし略して「パー」とだけ言っても同様の意味になる。また形容動詞としても用いることができ(例:あいつはクルクルパーだ)、その場合、道具がうまく機能しない場合などにも用いられる(例:車がパーになった)。いずれにしても最初のクルクルは勢いよく、動作が進展しながら、やりすぎて破局を迎える(パーになる)という擬態語であり、単純な知能劣位を表現しているのではないことは高度経済成長期に出現したことで理解が可能である。社会が高度化し、熱意の裏返しで不適合を起こす生き様が各所で見受けられ、庶民的感覚でこの表現が発生したのではないかと考えられる。「正直者=馬鹿」という発想と期を一にしているとも言える。
- 歯と歯茎をむき出しにして、お前など相手にしないなどの意を込めて「いーだ」という。
- 手の甲を相手に向けて手を握り、中指のみを突き出して見せる(男性性器の意)という方法は代表的侮蔑表現である。英語圏においてはファック(fuck)と同義とみなされる。米国文化が世界に広く知られているため、世界の多くの場所で通用する。敵対的で、周囲にも極めて不愉快な感情を与える表現である。
- 手を握り、親指のみを下に向かって突き出す行為(サムダウン)は、主にヨーロッパ文化圏で「死ね」を意味する表現で、極めて敵対的な侮蔑表現である。世界の多くの場所で通用する。敵対的で、周囲にも極めて不愉快な感情を与える表現である。
- 手を握り親指のみを立て、その親指で首を横になぞる行為も、主にヨーロッパ文化圏で「死ね」を意味する。「首を掻き切ってやる」という極めて敵対的な表現である。
- 中南米では、親指と小指だけを立てて他の指を曲げ手の甲を相手側に向けるのが相手を侮蔑するポーズである。これは、ヤギの角を示していると言われる。ヤギは弱い動物であると考えられているため、勇気がなく弱い相手であることを嘲笑する意味になる。角であることを分かりやすくするため、親指と小指を立てた手を頭の後ろに持ってゆき指だけが頭の上に出るように見せることもある。
- 両手の人差し指を立てて頭の両脇につける行為は、日本では“角(つの)が生え鬼になる”―「怒っている」事を示す行為で侮蔑の意はほとんどないが、中南米ではヤギの角(臆病者)の意味になり極めて侮蔑的な行為となる。
- 親指と人差し指で小さな円を作る動作は、日本では「OK」ないしコインの比喩から「お金」を表すが、世界中の多くの地域では女性器の意味になり、特に女性に対してこの動作を見せるのは相手を売春婦扱いすることになり、侮辱的であることがある。
- 笑いが侮蔑の表現手段となることもあり、この笑いは嘲笑(する)、せせら笑う、あざけるなどとも呼ばれる。笑いが侮蔑的意味を含むかどうかは多くの場合は前後の文脈などに依存する。嘲笑を文章で表現する場合、中立的な笑いの表現を流用することが多い。日本語では文末に(笑)をつけるなどの方法で表現する。より直接的に(苦笑)(嘲笑)などと書く場合もある。インターネットスラングでは(笑)の代わりにwを用いることもあり、この場合はwを続けてwwwなどと書くことで笑いの意味を強調している。英語ではインターネットスラングとしてlol(laughing out loud)が用いられ、lolololol..と続けて書くことで表現する。
[編集] 侮蔑に用いられる言葉
言語による侮辱表現は俗に悪口とも呼ばれる。侮蔑対象のいないところで侮蔑する場合、陰口と呼ばれることもある。しばしば公の場所からは排除され、俗語となっている。
[編集] 侮辱語
- 馬鹿・阿呆・間抜け、低能は、知能が低いことや人を表す語で、そのまま侮蔑表現として通用する。また、気違い、キ印も同じ意味合いを持つが、これは精神障害者への侮辱語でもあるので、馬鹿などとは違い差別的な意味合いも強い。尚、「釣り馬鹿」「野球気違い(野球キチも同義)」など、特定の物事に関して熱狂的な人にたいしても使われる。直截的な侮蔑表現を避ける意図からか、インターネット上では基地外・既知外などとあえて誤変換させる場合も多い。
- 下手は技術が劣ることを侮蔑する言葉としてよく使われる。語尾に辞を加え下手糞、下手っぴと言われることもある。類義語として青二才、半人前などがある。
- 他の侮辱語の前に接頭語として「ど」または「どん」をつける事によって侮辱の意味を強めることがある。ど下手、ど田舎、どん百姓など。
- 「助」などをつけて人名めかすことで、その人の特徴を侮蔑する。
- 侮蔑語の後に「野郎」などをつける事によってその人そのものの侮蔑をする事がある。馬鹿野郎、インチキ野郎、糞野郎、愚か者、卑怯者、○○○野郎(○○○の中にはいろいろな言葉が入るが、大抵は「大便」や「ウンコ」、あるいは性器の俗称などが入る)など。ただし、「盗っ人」など元々人を表す侮蔑語の場合は意味の強調になる。
- 名詞に「糞」「腐れ」などを前置する。
- 「カス」や「クズ」は、「社会のためにも人のためにもならないゴミのような人間」という意味がある。「がき」や「ちび」は、相手が子供(またはそれに同類)であることを馬鹿にする表現である。また、「~ども(め)」は、侮蔑の対象となるものが複数の場合に用いられる。
- 人道的ないし宗教的・精神的な意味で嫌悪を表現する場合、「汚らわしい(穢らわしい]])」という表現が使われる場合がある。この「汚れ」は物理的というより観念的な「穢れ」の意味である。仏教に関連して明確化した概念であり、キリスト教圏などでは同様の侮蔑で罪の概念を用いることが多い。
- 「~のくせに」「~の分際で」など、存在を全否定する。
日本語は日常会話で極端な侮蔑語を発することが少ない言語で、むしろ「大根」「こんにゃく」など婉曲な侮蔑語が多い。しかし外国語では日常会話でさえビッチ(bitch)〔風俗嬢〕、バスタード(bastard)、マザーファッカー(motherfucker)〔臆病者〕、アースホール(arsehole / asshole)などを連発する英語、セッキ(새끼、ガキ)、ケーセッキ(개새끼、犬ころ)、シッパル(씨팔、性器を指す)を連発する韓国語など極めて豊富な侮蔑語彙をもつものがある。
[編集] 侮蔑の動詞
敬語と同様に動詞に特別の助動詞を加える、別のことばを用いるなどの方法で侮蔑の侮意味合いを表現することがある。敬語とは逆に、相手を貶めるか自分を持ち上げる表現をする。
- 相手を貶める表現を使う。
- 「~やがる」「~くさる」「~よる」など侮蔑の助動詞を接続する。
- 「死ぬ-くたばる」「食べる-食らう」「言う-ぬかす/ほざく/こく」など、別のことばを用いる。
- 被害妄想の感を伴う場合もあるが、相手の言動に対して「おちょくる」「なめる」「ふざける」など激しく非難する。
- 尊大語を用いる
- 「ごめんあそばせ」「~をば」など高慢な表現を用いる(女性のみ)。
[編集] 差別語
[編集] 蔑称
蔑称とは、特定の人物や、特定の特徴をもつ人や物事を蔑んで(馬鹿にして、見下して)呼ぶ言葉である。特に、別に正式名称のある場合の別名をこう呼ぶ。
社会的立場が弱い人に対して使われる蔑称は差別語とされ、排除の対象になることがある。しかし、差別語の排除が過剰である場合、それを言葉狩りという蔑称で揶揄することもある。
社会的立場が平均的ないし強い人に対して使われる蔑称は揶揄として取り扱われる場合が多い。
現代では「お前」は敬称ではないが、親密な相手に使われる場合もある為蔑称とも言い難い。しかし、目上の人や全くの他人に使うと蔑称となる。
[編集] 一般的な蔑称
- 小僧は年少の僧侶ないし奉公人を指す言葉だが、現在ではもっぱら年少者に対する蔑称として用いられる。呼掛け語として用いられる場合が多い。子供に対する蔑称としては、他に餓鬼(ガキ)・砂利・こわっぱ・わっかなどがある。
- ジジイ、ババアは老年の男女を罵って呼ぶ言葉であり、基本的に蔑称である。丁寧に呼ぶ場合は「おじいさん」「おばあさん」「御老体」を使うとよい。儒教圏に含まれる国々では高齢者を侮辱することはタブーとされている。欧米のメディアにはこのように高齢者をからかう場面が多々見られるが、日本や韓国ではまずありえないといっていいだろう。
- おっさん、おばはんは中年の男女を罵って呼ぶ言葉である。おじさん・おばさんが正しい言葉であるが、これらも文脈によっては蔑称となるので注意を要する(年齢、年代を指摘することが侮辱にあたることがある)。ただし、「おっさん」は関西圏を中心に、行動がおじさんくさい人に対しても使われる事が多い。また、「大阪のオバチャン」という場合は「元気がある」、「図太い」という意味になる。さらには、小中高生が20代の人をおじさん・おばさんなどと呼ぶケースさえある。
- 上記と同じ意味でオヤジ(親父ではない)もあるが、他人の中年女性を「オフクロ」とは呼ばない。
- 自分は物事を良く知っていると錯覚したものが他者に対して、「よく勉強してください」という場合、「あなたはバカだ」と言っているのと同義である。
[編集] 特定の思想・宗派に対する蔑称
- アカ(紅、Red)は共産主義者への蔑称。
- 非国民、国賊は、日本においては戦前の大日本帝国の体制に対して批判したり、変革を求める者に対する蔑称。転じて、現代でも日本の伝統的な物事を変革しようとする者に対する蔑称として使われることもある。
- 売国奴は私益を図るという目的から、自国を害し他国を利する者のことを指す蔑称。法的にも最大限の非難を加えられる行為とされ、売国行為により日本国への武力行使をもたらしたものに対しては必ず死刑が適用される。
- フェミナチは、フェミニストやその共感者への侮蔑語。人工妊娠中絶をホロコーストと同一視することによって、フェミニズムとナチズムを強引に結びつけたもの。
- キリスト教徒への侮辱として耶蘇(ヤソ)と呼ぶ事があったが、近年はあまり使われない。なお、耶蘇はイエスを音訳したもの。
[編集] 集団や職業に対する蔑称
[編集] 「**屋」
- 職業を「**屋」と呼ぶ場合、一般的には特定の職業を安っぽく軽んじて呼ぶ場合、ないし金銭にあざとい人への蔑称として用いられることがある。
- 「政治屋」は政治家の蔑称で、特に金権政治に対する揶揄として用いられる。
- 「ブンヤ」は新聞屋の略で、新聞記者などマスコミ人に対する蔑称である。主に戦前に用いられた。同義語としては一部のジャーナリストが使いまたインターネット上を中心に用いられる「マスゴミ」などがある。類義として「トップ屋(正社員でないフリーランスジャーナリスト)」。
- 行政書士を「代書屋(もしくは書き屋)」と蔑視する事も。書類を作成する以上の行為は法で禁じられている事から。
- 公務員やサラリーマンも大きく分類すると事務系と技術・技能系に分けられ、それぞれが「事務屋」・「技術屋」と呼ばれることがある。自身と同じ職種の者を「**屋」と呼ぶことは自嘲になるが、事務系職員が「技術屋」と相手を呼んだ場合は「視野が狭く自分の殻に閉じこもって融通が利かず、専門以外の分野に疎いため他の職域では使えない奴」、反対に技術・技能系職員が「事務屋」と相手を呼んだ場合は「快適な部屋の中で数値化された結果だけしか見ず、何でも規則で縛って現場の実情を何一つ知らない奴」という意味などで蔑称になる場合もある。
- 技術者(エンジニア)に対して技術屋(メカニック)と呼ぶ。これは技術者自身も使う表現だが、上記と同様に事務職員(事務屋)が使った場合侮蔑と受け取られることがある。
- 畜産農家に対し、「牛屋」・「豚屋」・「鶏屋」を用いると蔑称になることがある。ただし、その農家に対して技術指導などの目的で日常的に出入りしている獣医師や農業改良普及員が「さん付け」で用いる場合には特に蔑称になることはない。
- 先物取引業者を「豆屋」、証券会社を「株屋」と呼んで蔑む場合もある。
- 清掃作業員が「ゴミ屋(もしくはクズ屋・バタ屋)」と呼ばれ蔑まれる例は多い。清掃作業員が仕事でゴミを扱うのは事実であるが、ゴミを売り買いするわけではないのであるから、蔑称である以前に表現自体が非常に不適切である。
- 例外的に映画人達は自らを「カツドウヤ」(活動屋 映画の旧称「活動写真」から)と誇りを持って呼ぶ。外部からこの呼称は使われない。
[編集] 「**医者」
- ヤブ(藪)医者
- 町医者 : 大病院(大学病院または総合病院)の医師が、中小の医院や診療所を営む開業医を蔑んで言う。ただし、開業医が自嘲して言うだけでなく、「患者の立場にたち、地域の実情に合わせた医療を目指している」という意味で、むしろ誇りを持って言う場合もある。
- 「町**」の形では他に中小企業(下請けを含む)の零細工場に対して「町工場」と呼ぶ。
- 医師の一部には動物が人間よりも価値が低い存在と捉え、獣医師に対して蔑みの意味を込めて「**医者」(「犬医者」など、**に特定の動物名が入る)」と言う者がおり、これはその道に進んだ者を「医者のなり損ない」などと侮辱した例である。しかし、現在の獣医療技術や各獣医大学の偏差値は医師のそれと比較しても何ら遜色なく、大学即ち獣医学部の人気を示す入学試験倍率においては医学部をはるかに上回るようになっている。
[編集] 「**婦」
看護婦、保母などの表現は、女性中心になりがちで、なおかつ「婦」というのが女性蔑視に当たるという考え方から、男女雇用機会均等法に基づき、看護師、保育士に変更された。ただしこの保育士というのは、下記に記すように男性が主体の職業を指す事が多く、保育というのは女性の方が多い仕事と捉えられているため、男女を問わない保育師の方が良かったのではという考え方もあるだろう。もっとも、栄養士というのは女性も少なくないし、以前からあったため、違和感はない。
[編集] 「**士」
上記とは反対に、「士」というのがもともと武士の意である「さむらい(現在は常用外)」であるために、やはり男性中心であり、男女共同参画の考え方にもとるということで、運転士や弁護士は引き続き用いられているが、看護士は看護婦と共に看護師に統一された。しかし上記のような矛盾があるほか、スチュワーデスを客室乗務員と改めたものの、呼び方が固く、キャビンアテンダントという呼び方では長すぎるし定着していないという意見もあるので、そうしたステレオタイプな改定には首を傾げるばかりである。
[編集] 職業の別称あれこれ
- 洗い場・皿洗い
- いかに優れた料理人といえども、最初は誰しも皿や鍋を洗うことから始まる。しかしながらこれが結構きつい割に低給であることから、蔑まれたり、アルバイトでもウエイターやウエイトレス(給仕)を希望する場合が多い。
- 給仕
- かつてはウエイター(男性)、ウエイトレス(女性)。現代は男女ともフロアスタッフまたはホールスタッフ言い換えるのが望ましい。また対象を男性の従事者に限り、ホテルやレストランにおいてボーイという表現が使われることもある。
- 漁夫・漁師
- 「漁師」は今でも漁業に携わる人が誇りを持って自称する場合も。
- 小使いさん・用務員
- 小学校等において清掃を含む施設の保守・点検、各種物品の仕分けといった雑務を担当する技能系職員に対する蔑称。現在では「校務員」と称される例が増えている。
- 女中
- 家政婦に対する蔑称。
- 三百代言
- 弁護士に対する別称。日本では弁護士の制度が江戸時代から存在し、彼らは代言人と呼ばれていた。一回三百文で代言を引き受けていたことから。
- 鳶職
- 気性が激しい人が多いとされることから、そのような人を「お前は鳶職か」と罵ることがあるらしい。
- 泥棒
- 公務員に対する税金泥棒、サラリーマンに対する給料泥棒という蔑称がある。ただしこれは、「能力や実績に見合わない高い給料を取っている者」という意味であるため、全ての公務員やサラリーマンに該当するわけではない(一方で、当然ながらどのような職域にでも存在する)。
- 土方
- 多くの場合、土木工事あるいはそれに従事する労働者のことをさすが、しばしば単純労働者への蔑称として用いられる。派生例として、プログラマの隠語で過酷で単純な労働に従事する企業プログラマのことを頭脳土方、デジタルドカタ等と呼んでいる例がある。
- 百姓・農民
- 百姓は江戸時代以前から用いられ、農家は今でも侮辱されているとは思っていない場合があるようだが、昭和に入ってから蔑称とされ、農民と言い換えられた。しかし学校教育で「江戸時代に士農工商の制度が敷かれていた」と教わり、そうした場のみで用いられる表現であることで、あまりにも古すぎる呼び方というイメージである。従って現代では農家または農業従事者と言い換えたほうが良い。
- 犬殺し
- 行政機関にて引き取られたペット動物の処分、及び野犬の捕獲に従事する動物保護センターの技能系職員に対する蔑称。
- 売女
- 売春をする女性、または貞操観念の低い女性などに対して用いられることがある蔑称。
- 企業に対する蔑称は、ネットスラングとして数多く存在する。日本語圏では同音異義語を使った侮辱が頻用される。2典Plusでの検索結果(キーワード:蔑称)
[編集] 特定の集団、個人の思想・趣向に対する蔑称
- 快活な女の子の意であるが、1990年代以降はどちらかというと尻軽女、または遊び癖のある女子の意へと変化していった。コギャルが援助交際などに手を出したことが原因か。
- 日本では不良少年・不良青年・暴走族の蔑称として用いられることが多い。もとはアメリカ東北部にすむ人、ないしアメリカ人全体の自称または他称であるが、古く暴走族のトレードマークといえば、絶壁のようにそびえ立たせたリーゼントであり(エルビス・プレスリーの影響か)、アメリカ人の象徴でもあった。これがいつごろからか暴走族以外の不良青少年に対しても使われるようになった。1980年代に連載されていた漫画「ヤンキー烈風隊」もこれに由来。ちなみに、他の呼び方に愚連隊(元は暴力団の一種を指した)、その予備軍たるガキ大将(ただしいじめっ子のほかに昔ながらの子供たちの絆を言う場合も)など。不良少女の別称はかつてはズベ公(老人語)、スケバンなど。暴走族のうち女子メンバーまたは女子のみのチームはレディースと呼ばれる。
- 関西地方においては「~やんけ」という接尾語を用いる大阪南部の河内地方に不良少年が多かったとされることから、同地域の出身者やそれに類する若者たちを「ヤンキー」と呼び始めたという説も根強く信じられている。
- ある特定の事物に熱中し、また特に社会的コミュニケーション能力に欠ける人を蔑むときに用いられる。かつてその種の若者が好んで使用した他人行儀で慇懃な二人称に由来する中森明夫の造語である。より蔑む場合は、オタ・ヲタク・ヲタという表記を用いることもある。例としては、アニメオタク(アニヲタ)、アイドルオタク、鉄道オタク(鉄ヲタ)、モーニング娘。オタク(モーヲタ)などがある。
- 上記の「オタク」とほぼ同義語として用いられる。鉄道マニア、軍事マニア、無線マニア、SMマニアなどの用法がある。しばしばオタクとマニアではどちらの方がまっとうか、コミュニケーション能力が優れているかという五十歩百歩の論争が繰り広げられる。
- 「ファン」は、上記「オタク」「マニア」に比べて、より健全な趣味人を指すが、しばしば自分の関心事でないものにどうしてそんなに興味を示すのかと皮肉の意を込めることがある(例:「もしこのまま優勝できればファンはさぞかし喜ぶんだろうな」)。「フリーク」は、どちらかといえばその中間的なポジションとして捉えられる場合も。
- 「**バカ」・「**キチ」
- 職業をはじめとするある特定の事物に熱中する性格や行為そのもの、もしくはそれ以外の分野の知見に乏しい人を蔑むときに用いられる言葉である。例として野球バカ、空手バカ、釣りキチなどがある。ただし良く言えば「プロも青ざめる**の専門家」という解釈の仕方もでき、「オタク」ほどの蔑称ではない(上記侮蔑語を参照のこと)。また、阪神ファンを「トラキチ」というが、これは阪神ファンの側から誇りを持って自称しているもので、蔑称に当たるとはいえない(類語として中日ファンの「ドラキチ」)。
[編集] 地域に対する蔑称
[編集] 部落
- 「部落」自体は元々集落を意味する単語だが(東日本では現在もこの意味で使われる)、部落問題において、被差別地域を中立的表現に置き換える際「特種部落」と名付けられたことから、九州から静岡県にかけての地域ではそれら被差別地域に対する蔑称として受け止められる。したがって、現代では地区・集落(地域共同体としては自治会・公民会)と言い替える例が多く見られる。
[編集] 関東地方の各地域に対する蔑称
- ダ埼玉(ダサイタマ):埼玉県およびさいたま市を侮蔑する語で、「ださい」と「さいたま」の合成語。類義語として、クサイタマがある。
- バ神奈川(バカナガワ):神奈川県を侮蔑する語で、「ばか」と「かながわ」の合成語。
- 千葉県に対しても、「だちば」という語がある外、選挙の度に買収・饗応行為が多発し、逮捕者を多数出した事から、自嘲を込めて金権恥場という表現が使われた。
- ネット上では茨城県をイバラ菌と侮蔑することもある。
- チバラギ:「ちば」と「いばらぎ」(正しくは「いばらき」だが、しばしば誤読される)の合成語で、千葉県と茨城県を揶揄する語。「ちば+いばらき+とちぎ」として栃木県を加える説もある。外に「ちば」と「イバラ菌」を合成したチバラ菌もある。
- 群馬県と埼玉県を合成したグンタマ(群玉)、更には北関東4県(と千葉県)を一色単に嘲るグンタマトチバラキなどがある。
[編集] 関東地方以外の地域を侮蔑する語
- 沼津食わず:沼津市を侮蔑する語で、「ぬまづ」と「のまずくわず」の合成語。類義語に「ぬまっき」があるが、これは沼津市内に実在した某私立高校の略称が発祥と言われ、インターネット上のスラングとして使われている。
- 滋賀サク(滋賀作):滋賀県を侮蔑する語で、「滋賀」と「田吾作」の合成語。
- ヲ奈良:奈良県を侮蔑する語で、「奈良」と「おなら」の合成語。
- 死酷:四国4県を侮蔑する語で、「四国」の語呂合わせで「死ぬ」と「酷い」をかけて「死酷」とした。
[編集] おのぼりさん・田舎者・東京者
- 地方から東京都23区(旧東京市)へ来た人を指して「おのぼりさん」「田舎者」という語が使われ、これには東京都区民の地方に対する侮蔑意識が含まれていた。逆に、地方在住者が都会から転入して来た人間を蔑む言葉として「都会もん(者)」「よそもん(他所者)」などがあり、特に首都である東京都23区から来た人には東京者(トーキョーモン)という侮蔑的な呼び方も存在する。
[編集] 裏日本
- 1970年代前半まで、太平洋側の地方は表日本、日本海側の地方は裏日本と呼ばれた。これは明治以来使われて来た地理学用語であったが、太平洋側が優位な経済発展の過程で、日本海側に対する蔑称としての意味合いが強まり、新潟県選出の田中角栄が政権を握っていた時代に、表日本を太平洋側に、裏日本を日本海側に改称したため、現在では使われていない(学問上で使ったり、年配の人が使う事はある)。
- 他にも元来は純粋な地理的呼称である「裏」や「奥」・「下」といった呼称を、侮蔑的だと捉えることが少なくない。かつては、富士山の静岡県側が「表富士」と呼ばれたのに対し、山梨県側は「裏富士」と呼ばれたが、侮蔑的だとして、現在は「富士北麓(富士五湖)地域」や「富士山北麓」などと呼ばれる。
[編集] 山陰
- 中国地方では古くから、瀬戸内海側を山陽と、日本海側を山陰と表現してきた。元来、中国語で「南側」を「陽」、北側を「陰」と表現していたことに由来するものだが、気候などのイメージが加わって「陰」の字に否定的なイメージが持たれるようになったため、島根県と鳥取県では、山陰を「北陽」という名称に変更する運動があった。
[編集] ズーズー弁
- 東北地方に対しても蔑称はあるが、人や地域によって区々で、全国共通の物は少ない。ただ、コントなどで東北の方言(ズーズー弁)を真似した語を発して、嘲笑の対象とすることが多い。ただし、これは江戸落語形成の過程で田舎者の役を演じる際、特定の地方を連想させないために、栃木弁や茨城弁、福島弁など、東北と関東の接点地域の方言を混ぜ合わせた、どこにも存在しない方言を作って用いて来たため、これを範としてコントなどでも常総系や東北系の方言が田舎者の象徴のように用いられていると推察される。この他、福井弁・宮崎弁などにイントネーションが殆ど無いことを逆に特徴としてポジティブに使っていこうという傾向も見られた。(例:モーニング娘。の高橋愛、0930など)
[編集] 陸の孤島
- 陸続きであるにもかかわらず、交通機関・道路網の未発達で隣接する地域から取り残されている状態を、離れ小島に例えた語である。
- 特に九州の交通網の整備状況は、西高東低といえ、21世紀に入ってからも、宮崎県は交通の便が悪く、かつて「陸の孤島」と呼ばれたことがある。現在でも九州新幹線の日豊ルートや東九州自動車道の建設構想どころか、在来線の高速化や複線化すら不要だとされ、航空便が最も便利であることから、宮崎県の交通事情に対するジレンマの表れといえなくもない。
[編集] ひょうずんご
- 特に北海道、東北、新潟県、北陸、山陰、山陽、四国、南九州では、南関東から転勤や転校などで転入して来たり(特に自衛官)、進学や就職で首都圏に移転したり、全国津々浦々を転々として地元の方言に馴染めず、やむなく標準語を使ったりすると、親族からも「ひょうずんご」と揶揄される。年配者ほど標準語に馴染めないことの表れである。
[編集] その他
- 2000年代の中盤まで、全国的に合併特例法に基づく平成の大合併が相次ぎ、地方の中小自治体の象徴ともいうべき「大字」が廃止された事例が少なくない。しかしながら、合併ではなく自立の道を選択した自治体を中心に依然として大字が残っており、これがいわゆる田舎に対する侮蔑の対象になる場合がある。
[編集] 人種や民族に対する蔑称
以下は人種差別に関する代表的な語彙であり、ヘイトスピーチとみなされ公共の場での発言は著しく忌み嫌われる。
- 日本人に対する蔑称としてはジャップ、あるいはニップ(フィリピンで使われる)がある。もう少し広い意味でのアジア人に対してはイエローモンキー(主に欧米人が使う)ともいう。ただし、ジャップやイエローモンキーは、欧米人だけでなく、日本人を侮蔑する言葉としては、韓国人や北朝鮮人も好んで用いる。
- 中国では日本・日本人を蔑するときに使う蔑称として「日本鬼子」(リーベンクィズ 日本軍が“日本鬼(リーベンクィ)”と呼ばれていた事から)や、「小日本」(シャオリーベン)が、また韓国・北朝鮮では「チョッパリ」(쪽발이、豚足野郎の意。足袋を豚の蹄に見立てた表現)や「ウェノム」(왜놈、「ウェ」は日本の古名「倭」より。よく漢字で「倭奴」と書いて「ウェノム」と振り仮名を振ることがあるが「ノム」は朝鮮語の固有語であって「奴」の訓ではない)が使われる。
- ヤンキーは、アメリカ東北部に住む人、ないしアメリカ人全体の自称または他称で、自称である場合は自尊的に用いられるが、アメリカ以外の国ではアメリカ人に対する尊称だったり蔑称だったりとまちまちである。グリンゴは主に中南米でアメリカ人を蔑むときに用いられる。また戦前の日本では「鬼畜英米」、「毛唐」、共産党政権下の中国では「美帝鬼子」などの蔑称が政策的標語として掲げられている例もある。
- ニガーは、主にアメリカにすむ黒人に対する侮蔑語。また、黒人同士でニガーと言い合うのは兄弟という意味合いがあるため、侮蔑というよりは自嘲に近いものがあるのかもしれない。中国語のひとつ、広東語では黒人に対する侮蔑語として「黒鬼」(ヘックェイ)がある。日本では「クロンボ」がそれにあたる。
- 日本語における欧米人に対する蔑称としては、ロシア人に対するロスケ(“露助”より。露助は「ロシア人」を意味する「ルースキー」の音訳で当初は蔑称ではなかった)など。
- チーノは、ラテン系言語で中国人を意味する一般語彙であるが、中南米では中国人の蔑称として使用されている。また、時として東洋人全般を蔑むのにも使用される。
- チン、チャン、チョンは、中南米において東洋人全般を蔑むときに用いられる。チョン(チョン公)については日本でも、韓国・朝鮮人(特に朝鮮人)への蔑称として使われる。日本での語源は「朝鮮」を日本語読みした「チョウセン」および韓国・朝鮮語読みの「チョソン」(조선)を短縮したものという説、「総角」(총각、チョンガク。日本では「チョンガー」と発音されている)に由来するという説、「朝鮮高校」を略した「朝高(ちょうこう)」が「チョン公」に訛ったという説などがある。「チョウセンマツタケ」「チョウセンアサガオ」「チョウセンハマグリ」などは正式名だが、これらから転じて「チョウセンベンツ(マツダ・ルーチェ)」「チョウセンポルシェ(マツダ・RX-7)」など、まがいものや正統性に欠けるものに対して接頭語として用いられることがある。
- 米国ではKoreanという単語は国籍を意味するだけでなく差別的メッセージも含まれている為、アパートやビルの賃貸売却広告または名称に使ってはいけないというアメリカ連邦法院の仮処分命令が下された。
- 三国人(第三国人)は、戦後にGHQが朝鮮、台湾など日本の旧植民地を「Third Nations(戦勝国でも敗戦国でもない第三の国)」と呼んだことから生まれた呼称である。当初は自ら「三国人」と自称し、敗戦国民である日本人と差別化するために積極的に使用していた時期もあったが、戦後の混乱期に日本人との間で強い摩擦を生じていくうちに、いつしか侮蔑の意味合いが加わり、在日韓国・朝鮮人に対する蔑称として認識されるようになった。類義語にザイニチがあるが、今のところはまだ三国人ほどの侮蔑のニュアンスはないようである。
- 第二次大戦前には、朝鮮を「鮮」、朝鮮人を「鮮人」と呼び習わしていた。「内鮮一体」、「不逞鮮人」などの使い方がされ、戦後も1965年の日韓国交正常化までは、韓国、北朝鮮をそれぞれ「南鮮」「北鮮」と呼んでいた。頭文字をとって「朝」と呼ばずに「鮮」と呼んだのは、「朝」が「朝廷」と同じ字であるという理由で、侮蔑の意図をもって「鮮」の使用を奨励したためとされる。
[編集] 各国の慣習・思想などに対する揶揄
[編集] 日本
エコノミックアニマル
- 高度経済成長期、ただただ経済的発展ばかりを追い求め、戦時中とは打って変わってアメリカの言いなりになっていた日本を揶揄してこう言われた。
[編集] 中国
- 人海作戦
- 20世紀中盤までの中国の土木技術は、近代的な建設機械の導入が遅れ、もっぱら人海作戦と呼ばれる人手に頼った工法を採っていた。このことから、21世紀に入って経済発展が急激に成長を果たすまで、中国や他の後進国に対する揶揄として用いられた語。
[編集] 特定個人から派生した蔑称
- 昔から、その当時の有名人に対して蔑称が付けられる事が多く見られる。
- 本人の名前が蔑称として使われる場合もある。
- 水死体の代名詞だが、山東京伝によれば江戸時代の力士「成瀬川土左衛門」の体格が水死体のようであったことが語源とされる。
- 覗き行為の代名詞となっているが、これは「出歯の亀吉」こと池田亀太郎が語源となっている。最近では2ちゃんねらーを中心に田代まさし(タシロ・タシーロ)が覗き・盗撮の代名詞として取り上げられた事が挙げられる。
- 立ち居振る舞いや身体的・精神的な変化をして侮蔑語が作られることもある。
- 江川る・伊良部る
スポーツ選手から来た侮蔑語には次のような言葉がある。
- 「イチロー」は、浪人生(一浪)に対する侮蔑であり、受験生の間では「滑る」「落ちる」「どこにも引っ掛からない」などと同様、忌み言葉として受験が終わるまで敬遠される。
- 「江川る」は、元東京読売巨人軍の投手・江川卓が動詞化した言葉である。「傍若無人な振る舞い」を侮蔑した言葉。
- 「伊良部る」は、偉ぶることの変形。
- りえ痩せ
- 一時期、人気女優の宮沢りえが婚約までしていた貴乃花関(現貴乃花親方)との破局後、CDをリリースするも泣かず飛ばずで、心労のため著しく体重が減少したことがあった。これを当時の4大女性週刊誌(週刊女性、女性自身、女性セブン、微笑〔現在は廃刊〕)が挙って採り上げ、表題でりえ痩せと称したのであった。これが他の女性有名人の激ヤセにも用いられた。そもそも激ヤセという言葉自体が立派な侮蔑語であるのだが。
- クレムリン宮殿
- 力道山が現役時代、自分の報道にとてもデリケートだった力道山サイドの態度に戦々恐々としていたマスコミが「すぐクレームをつけてくる」ということからこう呼んでいた。
[編集] 比喩による侮蔑
[編集] 価値が低いものに例える
ごみ・くず・かす・クソ・糞・ウンコ・などは、それぞれ一般的に価値が低いとされるもので、それを他の人や物に対する代名詞として使うことで、それらへの侮蔑表現として通用する。日本語以外の言語でもほぼ同様である。例えば、Shit(英、「糞」)というのは本来の意味(排泄物、大便の意)で用いることすら慎まなければならないほど侮蔑的要素が強い卑語である。
日本語では、野菜の名前が侮蔑表現として機能することがある。たとえば足が太い人に対しての大根(もともと色白の足を褒める言葉だったが、後に太い足を侮辱する言葉になったとされる)・侮辱語の一つであるおたんこ茄子(「オタンコナス」で1つの言葉、江戸時代の花魁の符牒で「お短小茄子」=小さな男性器という侮辱から発生した、という説がある)・色白や細身の男へのモヤシ(っ子)などがある。この表現は子供っぽい印象を与え、深刻な敵意を表現するほどではない。但し、大根は成人女性に対しても十分に侮蔑語として通用するので、乱用するべきではない。
[編集] 人間以外の動物に例える
[編集] 犬(科)に関するもの
犬は、誰かの忠実な従者であるような人、または他者の秘密をかぎつけようとする人間を蔑むときに、比喩的に用いられる蔑称である。他に「誰かについて回る」という言葉では、後述のコバンザメや「腰巾着」などがあり、もっとストレートに寄生虫と言う場合もある。また、若者の間ではピクミンをもじった「ピクる」という言葉も存在する。
[編集] 猿(科)に関するもの
猿は、小ざかしい人、他者のまねをする人、騒がしい人、ないし容姿が猿に似ている人を蔑むときに、比喩的に用いられる蔑称である(織田信長が豊臣秀吉に使った事で有名。秀吉が貧相だった為。ただし蔑称でなく愛称であると受け取られることが多く、実際もそうだったようである。)。ただし、メガネザルについては、子供の間でのみ眼鏡をかけている人を比喩的に表現する場合に使われ、大抵は成長と共に消滅していく。黄禍論の盛んなころ東洋人に対する蔑称として(ニコライ2世やヴィルヘルム2世が多用)
[編集] 猫(科)に関するもの
猫は、性質が極めて気まぐれであることから、転じて「気性に裏表がある、「個人主義的(調和を殊のほか重んじる日本では疎まれがち)」という意味も込められる。
-
- 泥棒猫
- 他人の家の食べ物を盗むことから、妻子ある男性と関係を持った女性に対し、その妻が侮蔑の意を込めて言う。
[編集] 馬に関するもの
馬は、顔が面長の人を「馬面」ということがある。
[編集] 家畜に関するもの
- 羊
- カトリック教会では神父(または牧師)が「迷える子羊」と言うことがあり、これは侮蔑には当たらないが、一般的にラジオ・TVの人生相談の番宣で用いると侮辱となる可能性がある。
- 豚
- その生態から太っている人や汚らしい人、貪欲な人に対して使われることが多い。
- 山羊
- 新約聖書(マタイによる福音書)では、ヤギを悪しきものの象徴として扱うくだりがあるため、国によっては山羊の真似をすることが侮辱行為とされる。
[編集] 鳥類に関するもの
- 風見鶏
- 実際の風見鶏が風によって刻々とその向きを変えることから、日和見主義の人物あるいはそのような性格を指して言う蔑称。
- つばめ(燕)
- 「若いつばめ」は、年上の女性にかわいがられる若い男子。また、年下の夫。
- 鶏・チキン
- ハゲタカ
- コンドル(ハゲワシ)の俗称。死んだ動物の肉を食い漁る性質から、ハゲタカファンドとは、死に体の企業に投資する外資系投資ファンドに対する揶揄。
[編集] 魚介類・海洋生物に関するもの
- コバンザメ
- 誰かにしょっちゅう付きまとっている人のたとえ。
- ザコ
- ①弱い相手を罵る語。②有象無象なもののたとえ。
- タコ
- ①禿げ頭の男性に対する侮蔑。「たこ入道」とも。②使えないこと。人や物が言うことを聞かない(使い甲斐がないの意)こと。
- まぐろ(鮪)
- 性行為の最中に動きたがらない女性を揶揄する。
- シーラカンス
- 「生きた化石」の別名を持つことから、恐ろしく時代遅れな人や物に対する揶揄。
[編集] 虫に関するもの
- 蛆虫
- 単に汚らしい者に対する侮蔑。蠅の幼虫である蛆は、便所など不潔な所を好むため「男鰥夫(やもめ)に蛆が湧く(独身・単身の男性は、部屋の片づけや掃除を面倒くさがることから)」とも。
- ちなみに、天照皇大神宮教は、「蛆の乞食よ目を覚ませ」と説いているが、これは上へ上がろうとするときに他の者を踏み台にしてまで這い上がろうとすることを蛆虫に例えたといわれる。
- 蚤
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- 蚤の心臓
- 臆病者、小心者のたとえ。
- 蚤の夫婦
- 妻の方が背が高い夫婦に対する揶揄。
- 蝿
- ゴキブリ同様、ちょこまか動き(飛び)回ってうっとうしいものに対する侮蔑。「小蝿」というとさらに侮辱感が高まる。
[編集] 爬虫類に関するもの
- カメレオン
- 背景によって色を変える性質から、相手によって態度を変えること。
- 蛇
- ①狡猾ないし執念深いヒトに付いて、隠喩的に用いられる。狐に例えるよりも侮る意味が弱く、ある種の畏怖を抱くような場合に用いられる。②直喩的に、目が細い人、または顔全体が蛇を彷彿とさせる人をいう。
[編集] その他の動物に関するもの
- 鼠
- こそこそと秘密をかぎ回る人を蔑むときに用いられる。ドブネズミの場合は、単に薄汚い人を蔑む場合に用いられることが多い。
- 蝙蝠
- (獣(哺乳類)なのに鳥のように飛ぶところから)状況の変化により、有利な側につく者を罵る場合に用いられる。
- カメ
- 動きが遅いことから、のろまあるいは愚鈍な人に対して用いられる。
- カバ
- 直截的に顔がカバに似ている人。間接的には動きの鈍い人に対して用いる。
- キリン
- 極端に背が高い人を言う。
英語圏(特に米国)に於いては、ニワトリ(チキン)は臆病者を表し、相手をチキンと呼ぶことは臆病者とののしる意味がある。中南米に於けるヤギも同様である。
非人道的あるいは汚らわしい人物や行為を侮蔑する場合、哺乳類一般を意味するけだものないし畜生が使われる場合がある。獣類一般が侮蔑語として機能しているのは仏教の六道で畜生道が人間道の下に置かれているのと無関係ではないが、仏教特有の価値観というわけでもない。英語ではbeastやbeastlyが同様の侮蔑表現として用いられる(ただし日本語で言う「野性的の意味の誉め言葉として用いられることもある)。畜生の場合は呼びかけでは「この畜生めが」が典型的に使われるが、その短縮形である「(こん)畜生(め)」は悔しさの表現に転化している。
これをより強調する場合には鬼が使われる場合がある。ただし、この表現は軽蔑というより恐れ・怒りなどを表現することが多く、好意的に「厳しい人」「妥協の無い人」の意味で使われることもある。また動物と組み合わせて「犬畜生(にも劣る)」などがある。
さらに強調する場合は、両者を合わせて鬼畜という表現が使われる。これは存在自体が許しがたいといった強烈な憎悪に近い侮蔑のニュアンスを含む。これでも足りない場合「鬼畜にも劣る」という表現が使われる。
[編集] 植物(野菜・草木)に例える
日本語では、植物に例えた侮蔑語も数多く存在し、用いられてきた。
- 芋
- 野暮ったい物もしくは人を嘲る意味で使われる。
- ウド
- 「ウドの大木」とは、大きく育ってしまって逆に役立たないもののたとえ。
- 南瓜(かぼちゃ・カボチャ)
- 茄子
-
- おたんこ茄子
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- ボケナス
- 白菜
- ①白髪頭でオールバックの男性を嘲る。②「歯が臭い」の駄じゃれ。
- 糸瓜(ヘチマ)
- つまらないもののたとえ。「だってもヘチマもない」は、言い訳をしようとするものに対して聞きたくないという意を含める決まり文句である。
- モヤシ
- 痩せ細っていて体力もしくは腕力がなさそうな人のたとえ。
[編集] 有害なものに例える
存在を疎ましく感じる者、または見下すときに、病気を引き起こしたり汚染や公害の原因となるものに例えることがある。
[編集] 危険なものに例える
[編集] 直截的な侮蔑
[編集] 身体的特徴を指摘する
身体の著しい特徴が侮蔑されることがある。しばしば差別と関連し、特に障害に関連するものはここでは除外する。
- 身長の低いことを指摘することは、特に男性に対しては多くの文化圏では侮蔑となる。日本語ではチビがこれに該当する。日本の若い女性の間では、平均身長以下の男性にもこの言葉を用いることが多く、本来の意味ではなくなっているとも言われている。この場合は、高身長であることが当たり前で、そうでない男性を侮蔑する言葉として用いられているといえる。
- 太りすぎていることを指摘することは、特に先進国社会では侮蔑となる。日本語ではデブがこれに該当する他、相撲取りや太った芸能人の名前を出す場合もある。アメリカでは特に自己管理能力がないと見做され企業での昇進が遅らされるなど、経済的に差別される傾向にある。しかしこの傾向は国や地域によって異なり、中南米ではさほど侮辱の意が強くない。恋人同士が相手のことを"Mi gordito"(私のおデブちゃん)などと呼ぶのはよくあることである。また、痩せすぎの体型は日本では太りすぎほどにはマイナスとみなされないが、ガリ、「鶏ガラ」「モヤシ」などの蔑称もある。イスラム諸国では女性は太っているほうが美人と見なされる。
- 脱毛症などで頭髪が薄くなった人の場合、禿(はげ、ハゲ)が該当する。また、自分の意思で敢えてスキンヘッドにしている人にも使われてしまう。
- 不細工・不格好、ブ男(醜男、不男)、ブス、醜女(しこめ)
- それぞれ男性ないし女性の容姿が醜いことを指摘する言葉である。
- 整形美人
- 整形している人に対する悪口。同名のテレビドラマも放映された。
- バックシャン
- 後姿が綺麗な女性の意。転じて、「後姿の美しさで期待したが、振り返ったらそうでもなかった」の意に変わってきたので、言葉そのものが古く、滅多に使わなくなった。
- ソース顔・しょうゆ顔
- バブル全盛期にOLが男性の顔を味覚になぞらえた言葉。ソース顔とは洋風、しょうゆ顔といえば和風の顔の意。すぐに使われなくなってしまった。こうした表現は過去にもあり、舶来風な様を「バタ臭い(=バター臭い)」という表現があった。
[編集] 性的特徴・性行為・性的志向・性自認に関する言葉を使う
恋愛・性行為は多くの人が重視する上、需給関係がアンバランスだったり、道徳的に制限が多い都合、侮蔑に関連した表現も多い。最近ではSM系アダルトビデオや、俗に言う「2次元キャラ」、「萌えキャラ」の影響も受けつつあり、そこから生まれた誤解も広まっている。
- 男性に対し陰茎が小さいことを指摘することは、しばしば侮蔑となる。また、亀頭が小さく、全体的にドリルのように見えることを、「ドリチン(どりちん)」と呼び嘲ることもある。
- 男性が童貞であることを指摘することは、しばしば侮蔑となる。ただし性行為に関する規制が強い文化圏ではそうでもない。日本では、性交渉の経験がある男性でも、外見や容貌が今風でない場合には、「女性にもてなそうだから童貞」と見なして「童貞」と呼ぶ場合がある(若い女性に多い)。
- 男性が包茎であることを指摘することは、場合によっては侮蔑となる。また仮性包茎は包茎と異なり生物としてもっとも自然な状態であるが、文化的誤解などにより日本などでは侮蔑と取られる場合がある。日本では、若い女性が男性を罵る言葉としては非常にポピュラーである。また、小学生で陰茎が剥けている者は「ムケちん」といい、中学生以上で包茎の者が侮蔑の対象となる。陰毛の有無に付いても同様で、このように小中学生は共通性を美徳とし、少しでも異なっていると、その良し悪しに拘らず侮蔑の対象となってしまいがちである。
- 女性の乳房の大小を指摘する(「巨乳」、「貧乳」など)ことは、場合によっては侮蔑となる。ただし、乳房が小さいことを「美乳(微乳と音が同じことから)」と女性自身が言い換えることが日本では流行している。
- 女性の性器や乳首が黒い事を、(性経験が豊富な程メラニン色素が沈着するという誤解から)指摘する事も、侮蔑とされる場合がある。
- ヤリマンは貞操観念の薄い女性を侮蔑するときに用いられる。売女、肉便器もほぼ同義語である。特に、肉便器は女性を「男性のための物」として見ている事になるため、問題視される事も多い。なお、男性に対して同じようにヤリチンということもある。両者とも若年層では羨望の意味が濃く、年齢が上がるに従って侮蔑的意味が濃くなるようである。
性的嗜好・志向を示す言葉が侮辱に使われる事も多くある。
- ゲイのことをホモ、レズビアン(ビアン)のことをレズというのは侮蔑の意味を含んでいることがしばしばある。
- 性同一性障害のうち、MtFをオカマ、FtMをオナベという蔑称がある。なお、「オカマ」は本来ゲイをさす言葉であり、今でもゲイとMtF両方をさす言葉として使われることがある。「オナベ」もFtMとビアン両方に対して使われることがある。これは性同一性障害と同性愛が混同されてきたことによる。
日本語では性的表現や泌尿器を一般的侮蔑表現に拡張することは稀だが、他の言語では多い。
- 英語では"fuck"(性交)、"motherfucker"(母親を姦淫する者)、"ass hole"(尻の穴)など。
- スペイン語では"jodido"(性交した者)、"coño"(女性器)など。
[編集] 年齢・年代を指摘する
- 高齢の指摘が侮蔑となる事がある。特に女性に対しては、侮辱となる事が多い。先進国社会ではこの傾向が強く、アメリカでは公的な文書に年齢を記載しない事(アンチエイジング)が大変に流行している。
- 高齢化に伴い認識能力、運動能力、記憶力が低下することを意味する耄碌(もうろく)も痴呆と並んで差別にあたるのではないかと言われている。
- 年齢と未婚であることを併せて指摘して女性を侮辱する事がある。近年、負け犬の遠吠えのヒットにより、平均的な結婚年齢(所謂“適齢期”)を過ぎてなお未婚である女性を負け犬と呼ぶようになった。これは、蔑称というより、むしろ30歳以上の未婚女性の諧謔的な自称として使われる。また、かつては未婚の男性を「チョンガー」と云ったが、最近では使われる機会はめっきり減ったようである。
- 男女を問わず、中年である事の指摘が侮辱に当たる事がある。おじさん、おばさんという呼称は文脈によっては侮辱の意を持つ事がある。さらに、おっさん、おばはんは親しみとともに侮蔑の意図を込めていることもしばしばある。おじん、おばんになるとさらに差別意識が強くなる。熟女というと「中年女性は勘弁!」という意味合いを含むことがあるが、稀にこうした中年男女に対する異様なフェチを抱くものもいる。
- 中年男女から発せられる独特の体臭を加齢臭というが、行為がオジン臭いと、たとえそうした臭いがしなくても「あの人は加齢臭がきついのよねぇ」などと言われてしまう。
逆に、年齢が若い事を指摘して侮辱する事もある。
[編集] 家族を侮辱する
- 主人/家内
- イエが強固な時代に一般的に用いられていたが、近年は使わないようにすることもあるようだ。
- 宿六
- 夫、亭主を人名めかした侮蔑。謙譲語として、あるいは親愛の情を示す場合もあるので一概に侮蔑とは言えない。
- 山の神
- 神道では山の神は女性神であることが多く、またしばしば怒りっぽいとされることから、怒りっぽい妻を侮蔑する表現。 宿六同様に謙譲語として、あるいは親愛の情を示す場合もあるので一概に侮蔑とは言えない。
本人を直接侮辱するのではなく、家族(特に母親)を侮辱することによって強い侮蔑の意を示すことがある。 英語における最大限の侮辱言葉として「Mother Fucker」がある。
- 「おまえの母ちゃんデベソ」(子供の喧嘩の常套句とされる)
スペイン語圏では、母を連想させる「乳(ミルク)」を汚すことで侮辱の意味を表すことがある。
- "Me cago en la leche"(牛乳に糞をしてやるぞ)
中国語では「他媽的」という表現があり、魯迅は「国罵」(中国を代表する罵り語)とまで書いている。直訳すれば「あいつの母の」という意味だが、一字省略、一字文字を変えてあり、本来は「お前の母を犯してやる」という意味になる。
また、親や兄弟や親族が禿げていたり、太ったりしていても、子供はからかいのネタにするし、自分や家族や親族に自殺者や引きこもり、被差別部落在住者や身体障害者がいる場合、大人でも侮蔑し、実際に結婚や就職などが破談になったケースもある。
- 親馬鹿
- 王八蛋(ワンバダン)
- 中国(北京)語の王八は亀で、蛋は卵のことを指すので、相手を亀の子孫にして罵る言葉である。「寝取られ亭主」の意も。また、亀児子、亀孫子という言い方もある。
ちなみに、王八蛋の音だけを聞いた日本人がもちこんだのがアンポンタンという言葉。
- こぶ(瘤)付き
- 子供を同伴していることに対する侮蔑。「子連れ」も場合によっては侮蔑的な意図を含むことがある。「できちゃった結婚」も、結婚する前に子供が「できちゃった」という、否定的な意味合いが強い。
[編集] 価値観・言動などを否定する
相手の感性や価値観、言動などを否定したり嘲笑することにより侮蔑することがある。以下にいくつか挙げる。
[編集] 恥に関するもの
- 恥知らず
- 日本語では侮蔑的な表現である。日本は「恥の文化」といわれ、恥と侮蔑は縁が深い。特に母親が「そんなことをしたら自分が恥ずかしいでしょ」などと諭すことはしばしばである。しかしながらこれが言葉による虐待と見なされたり、極めて懲罰的な意図を込めることがある。
- Shame on you
- 英語。そのまま「恥を知れ」。
- 忘八蛋
- 北京語。忠・孝・礼・信・義・廉・悌・智の八徳目を忘れた者、“馬鹿野郎”の意。
[編集] 存在意義・価値観を否定する
- うざったい(ウザい)
- 邪魔っけ
- なにが~だ
- 何様
[編集] 挙動・体裁に関するもの
立ち居振る舞いや衣服、言動を馬鹿にした言葉は次のとおり。
- ああ言えばこう言う
- いちいち口答えすること。「ああ言えば上祐」の流行語も(被害者の心理を重く見てノミネートから外された)。古い言い方では「一言居士」とも。
- カマトト
- キョドる
- 緊張や人見知りを行動に表している人を「挙動不審」ととらえて動詞化し、侮蔑のタネにすることがある。
- 知ったかぶり
- 博識を気取ることを侮蔑する語。話の対象となる物事を知っているようで、まったく頓珍漢なことを罵る。また、ただ単に早とちりすることを嘲る場合は「勘違い」も侮蔑に当たる。
- 素っ頓狂
- いきなり奇声を発したり、突拍子もないことを思いついたりすること。「頓狂」を強めた言い方と見られるが、「狂」うという漢字が含まれる言葉に過剰反応を示し、差別用語と見なされる。
- ぶりっ子
- ろれ(ロレ)る
- 呂律(舌)が回らない様を侮蔑する語。ただし、現代では語源そのものがしばしば言語障害者に対する差別的表現であるので、芸能人の間で使われる業界用語に由来する「滑舌」という表現が一般化しつつある。
[編集] 被害妄想
- 後ろ指を差す
- 後ろから指差して謗ること。陰で悪口を言うこと。「後ろ指を差されないように心がけなさい」というけれども、初めから見ず知らず(かつ不特定多数)の者がそうすることを期待して(疑心暗鬼に勘繰って)いるようで、極めて失礼である。そもそも陰口自体が、言う人に態度の裏表がある事を表している。
- おちょくる・なめる
- 馬鹿にすることを詰ったり、責めたりする意を込める。→「おちょくる」は関西の方言に由来。
- 誹謗中傷
- 「誹謗」とはそしることの意であり、「中傷」とは事実無根の言い掛かりをつけること。時として発言者にそうした意図があるなしにかかわらず、そうされていると勘違いして「誹謗中傷はやめ給え」と責め立てる事がある。
[編集] 話し声に関するもの
- ガラガラ声
- いわゆるハスキーボイスを、否定的または侮蔑の意図を込めてこう呼ぶ。「だみ声」とも。
- きいきい声
- 「金切り声」の別称(蔑称)。
- 黄色い声
- 主に女性が挙げる甲高い声。憧れの的となる有名人の元に集まって大人げなくはしゃぐ声。
- 銅鑼声
- 上記「ガラガラ声」と同義語。
- 割れ鐘
- (「割れ鐘のような」の形で)成人男性の野太くて濁った声。
低学歴は、文字通り相手の学歴が中卒、高卒、三流大学卒など低い場合に用いられる。学歴社会である日本ではよく用いられる。「この中卒が」「○○大卒のくせに」などと、具体的に相手の学歴を言う場合もある。なお、大学の優劣については、駅弁大学の項目も参照されたい。
[編集] 尊称を使う
尊敬する気持ちが無いことが明らかなのにあえて尊称を使うこと(いわゆる「慇懃無礼」)により侮蔑の意を示すことがある。しかし、対象の面の皮があまりにも分厚い場合、侮蔑としての役をなさないという難点がある。
- 「○○先生は、いいご身分ですこと!」など。
- 2重敬語の使用。例:「先生様は大変すばらしいお方ですね」「社長さん」など。「先生」「社長」に既に尊敬の意が込められているので、「様」「さん」などの敬称を付ける事で軽蔑する事になる。
- 尊敬の接頭辞である「御(お・ご)」をつけるべきでない文脈であえてつける。例:「お役所」「お荷物」
- 旦那
- 「旦那(だんな、ダンナとも)」は、相手の亭主に対しては親しみを持って用いるが、「○○の旦那」「警察の旦那」などと、揶揄的な意図を含む場合がある。また、妻が自分の夫に対して使う場合は、多少軽んじた意を込める。
- 貴様
- 御前
- 現代では相手を蔑んだり、親しみの意を込めて呼ぶ際に用いられ、男性語の色合いが強い。時として軽蔑に当たる可能性がある。「御前さん」というと「あんた」に近いが、人によってはどうしてもお前と言われることに抵抗を示すこともあるので、使わないほうがいいかもしれない。
- 君
- きみ : 「君」は、現代では男性が同い年または年下の男女に対して用いる。
- 少なくとも明治時代頃までは相手に対する尊称であり、幕末に尊王の獅子によって多用されたが(天皇の元において皆平等であるという水戸思想が反映されたものである)、現在では相手を同等またはやや下に見た二人称になっており、使う相手によっては不快に取られることがある。
- 女性が用いる場合は、教師が教え子に対してとか、母から息子、先輩が後輩などに用いる。なおこれらの立場であっても女同士で用いられることはない。恋人同士で用いられることは無いと考えられてきたが、別項ボク少女のように、いわゆる友達以上恋人未満の間柄で用いられることもある。
- くん : 「○○君」は、現代では主に同等または目下の男子に対する敬称であり、目上の者に対して使われることはない。
- 職場によっては女子に対しても用いられることがあるが、読者層が若者に多いグラビア誌や自動車雑誌でアイドル・投稿者・レースクイーンなどに対して「~クン」と書くのは逆に失礼に当たる可能性がある。
- 「眼鏡くん」「ガリ勉くん」など、侮蔑的な言葉につけて嫌みの意を強調する。「秀才くん」のように揶揄の意を込める場合もある。
- 「~公」
- 本来公爵の爵位を持つ人への尊称であるが、現代では侮蔑的な意味合いとしてよく使われる言葉である、また、特定の国の人に対しても使われる。もっとも盛んに使われたのは1980年代前後の若者の間で、2000年代以降は死語化しつつある。(例、「先公(先生)」「ポリ公(警察官)」「ヤー公(ヤクザ)」「ズベ公(不良少女、語源はブス・阿婆ずれ女を意味する「スベタ」)」「アメ公(アメリカ人)」「イタ公(イタリア人)」「ワン公(犬)」)
- てめえ
- 自分を遜って呼ぶ言葉である「手前」がなまったもので、相手を罵る言葉(いわゆる罵詈雑言)になっている。
- 俗に「ワンマン」と呼ばれる独裁的な社長や権力者に対する蔑称として「○○天皇」(○○には苗字が入る)のように用いることもある。(例、「服部天皇(服部敬雄)」「黒沢天皇(黒澤明)」)
- 中南米のスペイン語ではvosが相手を罵って呼ぶときの言葉として使われる。古いスペイン語ではvosは相手に対する尊称であった。
[編集] 幼児言葉を使う
幼児に対する言葉遣いを大人にする事で、相手の無分別を嘲笑する事がある。
- 相手を「ちゃん」付けで呼ぶ。
- おこちゃまは、一般に幼児に対して使われる語ではないが、相手を幼児のように扱う意が込められており、侮辱の時にのみ使われる言葉である。
- ちんは、主に幼児や未成年の女子が愛称に用いることが多いが、馬鹿ちん、わからんちんというのは侮蔑である。
- きちゃない、くちゃいは発音が未発達な幼児といえども使わないが、そのことを侮蔑した表現である。
- おつむ(頭)、ぽんぽん(腹)は、現代では幼児は用いないが、「お寝んねしろ」「お前の車がえんこ(エンスト)したぞ」と共に、侮辱的な表現にのみ使われる。
- 稀有な例外として、カナダのヌートカ人の間では、背の低い人に対して幼児言葉を使う場合、「あなたは背が低いが、それは恥ずべきことではない」という意味の一種の敬意表現だという(イェスペルセンによる)
[編集] 格言に関するもの
古来から言い伝えられている諺や格言にも、現代では侮蔑または差別と捉えられる言葉がある。
- その日暮らし
- 働かざる者食うべからず
[編集] 同音異義語を使った侮辱
日本語では、漢字を輸入した際に同音異義語が多く生じたが、文字表記においてこの特性を生かし、ダブルミーンニングした語呂合わせが蔑称としてよく用いられている。例えば地球を罵る場合「地球」と書くべきところを「恥丘」と表記し、性行為に絡めて侮辱する、という具合である。
- 古くは奈良時代や平安時代に和歌や落首で、掛詞という修辞技法を侮辱に応用したものがある。
- 江戸時代のものは多く記録に残っており、最も代表的なものは鳥居耀蔵甲斐守の耀甲斐と妖怪をかけたものがある。
- 現代では新聞の一コマ漫画などの風刺で多く用いられる。
- ネットでは文字ベースの通信が盛んになったため、これらの普及以後は同音異義語の侮辱が数多く出ては消えている。ほとんどネット内のコミュニティでのみ通用する。インターネットスラング、2ちゃんねる用語に詳しい。
英語ではスペル入れ替えや、同じ発音でも単語の境目を変える、などの方法で同音異義語の侮辱を行うことがある(参照:en:Alternative political spelling)。
- 長い単語の中の一部分を切り出すと別の単語になる場合 (Hidden puns) 。無能な大統領に対しpResident(Resident=ただの住人)と揶揄したり、愛国的行動はpatRiot act(Riot act=暴動行為)にすぎないと批判したり、セラピストをthe/rapistと表記し(セラピストは強姦犯)と皮肉る、というように使われる。
- アルファベットの一部を見た目が似た記号に置き換えることがある。最も典型的なものは、対象が金に汚いという意味を込めて、S→$、E→€、L→£など通貨記号で置き換えるもので、マイクロソフト社 (Microsoft,MS) をMicro$oftないしM$と表記する例は世界中で用いられる。日本国内で見られるものとしては日本音楽著作権協会 (JASRAC) をJA$RA¢などと表記する例がある。
- 人種差別への批判として、CやKをKKKに置き換える場合。アパルトヘイト時代の南アフリカ共和国に対するSouth Afrikkkaという表記例などがある。現在のアメリカ合衆国についても、Amerikkkaとの表記が使われる。
[編集] 罵詈雑言
罵詈雑言(ばりぞうごん)とは、口を極めた悪口、ありとあらゆる口汚ない罵りの言葉の意で、侮蔑語よりさらに侮蔑および誹謗中傷の意が強まる。ここでは、一般的に男性語として通用する言葉は省き、 場合によっては暴言と見なされたり、誹謗中傷に当たる言葉を採り上げる。
- 相手を貶める表現を使う。
- 相手の行ないを激しく詰ったり、罵ったりする。
- 別な言葉を使ったり、接尾語を付けたりして罵る。
- 俺っち、俺様
「貴様」「おめえ」「てめえ」「おのれ」など。
「あいつ」「あやつ」「きゃつ」「奴(やっこ)さん」など。
- 接頭辞
- 接尾辞
[編集] 歴史中の侮蔑表現
[編集] 文学中の侮蔑表現
[編集] 侮蔑の故事
- 韓信の股くぐり
[編集] 参考文献
オットー・イェスペルセン『人類と言語』(改訂増補; Mankind, nation and individual from a linguistic point of view) 須貝清一・眞鍋義雄訳、荻原星文館、1944年