阪急5000系電車
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阪急5000系電車 |
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起動加速度 | 2.8km/h/s | ||
営業最高速度 | 110km/h | ||
設計最高速度 | 110km/h | ||
減速度 | 4.5km/h/s(通常) 5.0m/h/s(非常) |
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定員 | 座席48・立席92(先頭車) 座席52・立席98(中間車) |
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全長/全幅/全高 | 19000mm/2700mm/3605mm(5580型除く) | ||
重量 | 37.2t(電動車) 32.0t(付随車)(5580型除く) |
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軌間 | 1435mm(標準軌) | ||
電気方式 | 直流1500V | ||
モーター出力 | 170kW | ||
歯車比 | 1:5.31 | ||
制御装置 | 抵抗制御 | ||
駆動装置 | カルダン駆動方式 | ||
ブレーキ方式 | 電磁直通ブレーキ・発電ブレーキ | ||
保安装置 | 自動列車停止装置 | ||
備考 | 5580型のスペックは阪急5100系電車参照 |
阪急電鉄の5000系電車(5000けいでんしゃ)は、1968年から1969年に建造された阪急電鉄の通勤形電車である。
現在、全車が西宮車庫に配置されて神戸本線にて使用されており、他形式も含めた8両編成8本を組成している。本項目では解説の便宜上、梅田方先頭車+F(Formation=編成の略)を編成名として記述(例:5000以下8両編成=5000F)する。
目次 |
[編集] 概要
1960年代の阪急電鉄は神戸高速鉄道東西線・山陽電気鉄道本線乗り入れの計画から、神戸線の架線電圧を当時の600Vから山陽電鉄に合わせた1500Vに上げる事を予定しており、それに備えて2つの電圧に対応できる「複電圧車」3000系を1964年から製造していた。
昇圧は1967年に行われ、以降は600V対応の機能は必要無い事からそれを省略した車両が新たに設計された。これが5000系である。複電圧以外の基本的な構造は3000系に準じているが、電動車は始めからユニット構造を持つ、台車は空気バネ付きのミンデンタイプ(形式=動力台車:FS-369形、付随台車:FS-069形)を履く、M車(下記形式参照)が装備するパンタグラフは1両当たり2基から1基に減らされるなどの変更点がある。
当初は3両編成を2本繋いだ6両編成で登場した。その後多少の増備があったものの、ほどなくして冷房付きの5100系に移行したために製造は47両に留まっている。そのため、編成を8両へ増結(4両+4両)する際は多数の2000系列を編入している。なお、2000系列が2両連続して連結される編成が2本(5000F=2006年、編成替えで解消・5002F=2006年9月現在ではリニューアル更新工事未施工)存在する(した)が、これらの編成の2000系列同士の連結部には2000系オリジナルの広幅貫通路が残っている(いた)。
冷房改造兼更新工事は2800系の後を追って優先的に施工された。そのため、旧型のRPU2202形集約分散式8000cal/h×4基/1両が搭載されている。同時に2両に1台の割合で搭載されていた60kVAMGが京都線車両と同様の4両に1台の割合で120kVAを搭載する方式に変更された。この新型MGは神宝線車両で唯一京都線車両と同様の東洋電機製TDK3760形が使用されている。
冷房搭載で重量が増したので、冷房改造と同時に台車の強化が行われた。形式変更はなされていないが、5100系等が使用するFS-369A、FS-069A形と同形態となった。
更新時に先頭車の前面上部に方向幕が設置された。同部分にあった標識灯2灯は撤去され、窓下に種別灯と尾灯が別々に4灯新設された。8両編成組成後は特別な場合を除いて編成が解かれることはなくなったので、これら工事は5030以下4両が伊丹線予備車となっていた5000Fを除いて1、8両目のみに行われ、他編成の4、5号車は後にマスコン、ブレーキ、スタフ切替器といった運転機器が撤去されて先頭車としての機能を失っている。更新工事は1990年までに完了した。
阪神・淡路大震災では特に被害は受けなかったが、他形式の破損したパンタグラフの予備品を確保するため、5001F・5004F・5006Fの菱型パンタグラフがシングルアーム式に交換された。その他の編成はその後も菱型パンタグラフを搭載していたが、リニューアル工事を受ける際に同時に交換されている。
[編集] 形式
[編集] 新規製造形式
- 5000形
- 梅田方の先頭に連結される制御電動車。MGとCPを搭載し、5500形または5040形とユニットを組んで使用される。5030・5031は、1970年の増結運用(山電乗り入れ時に三宮駅で切り離される)開始に備えて増備された車両で、5500形とユニットを組み、増結車を解放した時の6両編成の先頭車として使用されていた。自動密着連結器を使用しており、区別のために30番台が付けられたが、それ以外の違いはない。下記編成図ではM'cと表記。
- 5040形
- かつて、増結用2両編成の新開地方の先頭に連結されていた制御電動車。パンタグラフと制御器を搭載し、5500形に運転台を取り付けた構造を持つ。5030・5031と同時に増備され、5000形の5000・5002とユニットを組んで2両編成を組成していたが、現在では中間に組み込まれている。下記編成図ではMcと表記。
- 5500形
- 5000形ユニットを組む中間電動車。パンタグラフと制御器を搭載。下記編成図ではMと表記。
- 5050形
- 新開地方の先頭に連結される制御車。下記編成図ではTcと表記。
- 5550形
- 付随車。当初、宝塚線での運用を考慮して、付随車を製造して6両編成に組み込む計画があり、それに備えて5563が製造されたが、結局1両のみの製造に留まった。その後、更新工事に伴う5050形の中間付随車化に伴い、形式内の車両数が増加した。中間改造車の車番は元番号+500である。下記編成図ではT(新造車および完全改造車)またはTo(簡易改造車)と表記。
[編集] 改造編入形式
- 5520形
- リニューアル編成に組み込まれる、5000形を中間車化して誕生した中間電動車。機能的には改造前と変わらないが、5050形の中間化改造車と異なり新形式が起こされている。車番は元番号+520。下記編成図ではM'o(簡易改造車)またはM'(完全改造車)と表記。
- 5580形
- リニューアル編成に組み込まれる、5100系から編入された付随車。車番は元番号から80または90を引いたもので、1の位は隣の車両の4桁目と同じ数になる。下記編成図ではTと表記。
- 2071、2171形
- 非リニューアル編成に組み込まれる、2000、2021系由来の付随車。詳細は阪急2000系電車の項目を参照。下記編成図ではTまたはTo(種車の形態により様々)と表記。
※ 「ユニット」とは2両の電動車でペアを組み、主要機器を2両に分散搭載することで、機器の製作コスト引き下げと保守の簡略化、電動車1両あたりの重量の軽減を実現するシステム概念である。
[編集] リニューアル
昨今の阪急電鉄のの経営事情・財政状況の厳しさから、新車による大量置き換えが難しく、2000年からアルナ工機(現・アルナ車両)で再度車両の大規模な更新工事が実施された。2006年現在6編成48両がほとんど新車同様に改造されている。
[編集] 変更点
[編集] 機能面
- 中間に入っていた運転台が撤去され、8両固定編成に改造された。撤去部は5010F・5008Fの2編成目までは他形式の運転台撤去車と同様に丸妻で側面窓が小さく、運転台仕切りが一部残るという簡易な改造(ただし、他形式と異なり2人掛けの座席が設置されている。)であったが、3編成目以降は切妻の完全な中間車スタイルに改造されている。但し、該当箇所の台車排障器は中部あたりで切断されたのみで、現在も他車とは形状が異なっている。
- 編成中の老朽化していた2000系列は脱車。代わりに宝塚本線から転属した5100系中間付随車が改番の上編入された。なお、冷房風洞の形状が違うため車体断面が違い、元5100系車のみ屋根高さが若干高い。
- 先頭車前面の形状が、以前と大きく異なった近代的なもの(写真参照)となった。車番は2編成目の5008F以降は左側の窓下に取り付けられ、それに合わせて手摺の位置が変更。足掛け板の厚みも後の更新車ほどやや薄くなるという違いがある。また、種別灯はHIDに変更。青みを帯びた光を発するようになった。
- 電動車が隣同士になるよう編成内容が変更された(MTMTMTMT→MMTTMMTT)。
- 屋根上の冷房室外機が交換された。鉄製からFRP製になり、側面ルーパーも縦割りから横割りになった。
- 改造時点で菱形パンタグラフ搭載車(5010F・5008F・5012F)はシングルアーム式に交換された。
- 車体屋根肩部分が6000系以降の車両と同じくアイボリーに塗り分けられた。
- 非常ブレーキが3300系同様の電気指令化された。
- 補助電源装置(電動発電機・MG)が東芝製から東洋電機製造製に交換された。
[編集] 接客面
- ドアのガラス部分が9300系と同じ位置まで下方に延長され、展望が向上された。前面貫通扉も窓を下方に拡大したものに交換されている。
- 窓ガラスが全て緑がかったUVカットガラスに交換された。
- 日除けが阪急伝統の鎧戸型からロール式カーテンに変更された。これにより日除けを任意の位置で固定することや子供や老人が簡単に操作することが可能となった。5010F・5012F・5004F・5001Fが下降式、5008F・5006Fが上昇式である。
- 情報伝達性を向上させるため、LED式電光表示機が各ドア横に設置された。7000系リニューアル車などと同様の箱型で、表示機下に路線図が貼り付けられているタイプである。
- 日焼け対策で妻面や貫通扉部分の木目板の色は8000系や9300系と同じ濃い茶色のものに変更された。5006F以降は貫通扉上部に広告設置枠の設置も行われた。
- 車内天井の回転ファンが撤去された、従来の冷房吹き出し口をそのまま活用しスウィープ機能を付加した車両もある。6000の一部に見られるラインデリア化改造はなされなかった。
- 床材は中央部に着席マナーの遵守を促すタイル状の模様が入るものとなった。
リニューアルは7000系、3300系等と平行して行われている関係で、更新ペースは1年に1本と遅い。
[編集] 編成
矢印は中間に組み込まれる先頭車の運転台(簡易中間化改造車は撤去跡)の方向で、←は梅田向き、→は新開地向きを示している。斜体字は他形式由来の車両。改番が行われた車両は括弧内に旧車番を示す。
←梅田 | 新開地→ | リニューアル工事期間 | 備考 | ||||||
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M'c5000 | M5500 | T5580 | To/T5550 | M'o/M'5520 | M5500 | T5580 | Tc5050 | ||
5010 | 5510 | 5580 (5660) |
5560→ (5060) |
←5531 (5011) |
5511 | 5581 (5661) |
5061 | 2000年10月~2001年8月 | リニューアル編成で唯一、前面の車番表記が扉部にあり、運転台が黒色化されている。 |
5008 | 5508 | 5588 (5668) |
5558→ (5058) |
←5529 (5009) |
5509 | 5589 (5669) |
5059 | 2001年10月~2002年10月 | 5010Fとの違いは変更点の項目で記述。 |
5006 | 5506 | 5586 (5666) |
5556 (5056) |
5527 (5007) |
5507 | 5587 (5667) |
5057 | 2002年10月~2003年8月 | 本編成以降4、5両目を完全な中間車に改造。 |
5012 | 5512 | 5582 (5662) |
5562 (5062) |
5533 (5013) |
5513 | 5583 (5663) |
5063 | 2004年2月~11月 | 本編成以降カーテンが9300系と同じ素材になった。 |
5004 | 5504 | 5584 (5664) |
5554 (5054) |
5525 (5005) |
5505 | 5585 (5665) |
5055 | 2005年2月~11月 | 5012Fと同仕様。 |
M'c5000 | M5500 | T5580 | T5550 | M'5520 | M5500 | T5550 | Tc5050 | ||
5001 | 5501 | 5591 (5681) |
5551 (5051) |
5523 (5003) |
5503 | 5563 | 5053 | 2005年11月~2006年8月 | 5563号は本系列唯一の新造付随車。荷棚が9000系と同じ構造になった |
M'c5000 | T2171 | T2071 | Mc5040 | M'c5000 | To2071 | M5500 | Tc5050 | ||
5000 | 2184 (2???) |
2085 (2???) |
5040→ | ←5030 | ←2083 (2???) |
5500 | 5050 | 2006年6月~改造中 | 現在、2000系T車以外の5両がアルナ車両で改造中 |
5002 | 2181 (2???) |
2082 (2???) |
5041→ | ←5031 | 2182→ (2???) |
5502 | 5052 | × | 現在、5000系でリニューアル改造が全く行われていない唯一の編成 |
阪急電鉄の車両 |
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現用車両 |
神戸線・宝塚線:9000系・8200系・8000系・7000系・6000系・5100系・5000系・3000系・3100系・2000系 京都線:9300系・8300系・7300系・6300系・5300系・3300系・2300系 |
過去の車両 |
神戸線・宝塚線:5200系・2200系・2100系・2021系・1200系・1100系・1010系・1000形・810系・800系・610系 550形・920系・900形・600形・500形・380形・320形・300形・98形・96形・90形・51形・34形・1形 京都線:2800系・1300系・1600系・710系・210系・700系・200形・100形(P-6)・10形(P-4・P-5) |
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