新幹線700系電車
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新幹線700系電車(しんかんせん700けいでんしゃ)とは、1999年にデビューした、東海道・山陽新幹線の第4世代車両。700系は最高速度が低い100系の置き替え用として製造された。今後は後継車種のN700系の投入が予定されている。
新幹線700系電車 | |
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新幹線700系0番台電車(静岡駅にて,2004年9月撮影) | |
両数 | 8(レールスター)/16(その他)両 |
起動加速度 | 1.6(東海道)/2.0(山陽)km/h/s |
営業最高速度 | 270(東海道)/285(山陽)km/h |
設計最高速度 | 310km/h |
減速度 | 2.7 (初速300)km/h/s(通常) |
編成定員 | 1,123(普)+200(グ)=1,323※1 571(普通車のみ)※2 |
全長 | 27,350(25,000)mm |
全幅 | 3,380mm |
全高 | 3,650mm |
編成重量 | 708t※1 |
軌間 | 1435mm |
電気方式 | 交流25,000V 60Hz |
駆動装置 | かご形三相誘導電動機 |
編成出力 | 275kW×48=13,200kW※1 275kW×24=6,600※2 |
制御装置 | VVVFインバータ制御(IGBT) |
ブレーキ方式 | 回生併用電気指令式空気ブレーキ(応荷重装置付き)、渦電流ブレーキ |
保安装置 | ATC-1型、ATC-NS |
備考 | ※1はC編成およびB編成、※2はE編成 |
目次 |
[編集] 概要
適度の製造・保守コストで東海道・山陽新幹線全体の高速化を図るべく、東海旅客鉄道(JR東海)と西日本旅客鉄道(JR西日本)で共同開発した車両である。最高速度は285km/hで(姫路駅以東は線路条件の為270km/h)、500系の300km/hには及ばないが、車内の居住性や乗り心地の改善を図っている。また、試作車は東海道新幹線を300km/hで山陽新幹線を310km/hでそれぞれ試験走行をしたことがある。ちなみに、1両あたりの価格は約2億3000万円である(16両編成で約36億4000万円)。全編成が日本車輌製造・日立製作所・川崎重工業・近畿車輛(JR西日本所有のみ)で製作された。
[編集] 保有状況
- JR東海(2005年3月時点)
- (主に「のぞみ」用)16両編成(C編成)×60本=合計960両
- JR西日本
- (主に「のぞみ」用)16両編成(B編成、3000番台)×15本=240両
- +(「ひかりレールスター」用)8両編成(E編成、7000番台)×16本=128両
- 合計368両
先行試作車C1編成(JR東海所有・9000番台)は1997年秋に完成し約1年半にわたって走行実験が行われ、量産化改造を受けて1999年秋から営業運転についている。
C編成のCは、Central(JR東海)のCではないかとされている。
[編集] 構造
モーターの制御についてはVVVFインバータ制御を使用している。ただしスイッチング周波数が高速なIGBT素子が採用されているため、発車時・停車時特にGTOサイリスタ装備の300系・500系で顕著なモーターからの磁励音が大幅に抑えられた。
3M1Tの4両1ユニットの構成で、500系の4両1ユニットを継承しつつ1ユニットあたりの電動車両数を減らすことにより、更なる車両制作費と車両整備費の低減と、軸重の分散を実現している。車体についてはアルミ製で、防音材を挟み込んだダブルスキン構造を採用しており、車内騒音に配慮しつつ軽量かつ低コストな構造となっている。なお、車両の空車重量は16両編成で634tであり、300系の637tと比べわずか3tの減少にとどまる。これは機器の軽量化や電気配線の効率化で達成した軽量化分20tのほとんどを乗り心地や静粛性向上のための装備に振り分けたためである。
また、300系や500系導入後に、これらの車両を利用した乗客から相次いだ乗り心地に関する苦情を反映して、セミアクティブサスペンションや非線形空気ばね、車体間ダンパなど、随所に乗り心地の改善のための工夫が施されている。
ブレーキについては、300系、500系にひきつづき、電力回生ブレーキを採用(付随車は渦電流ブレーキ)。緊急制動時の滑走対策として500系に装備されていた、セラミック噴射装置も採用して制動距離の短縮を図っている。
300系で問題となった空調の効きの悪さについては、基本能力の向上だけではなく、前述のダブルスキン構造による断熱効果の向上と噴出し口を天井近くから荷物棚下に移設することによるダクト長の短縮などによって大幅な改善をみている。
そして車体の状態を逐次監視および記録するため、32ビットコンピュータを利用したデータモニター装置を搭載している。得られた走行中の各種データは運転台のモニターに表示されるほかメンテナンスの際の参考データとして活用され整備作業の効率化に貢献している。
以上の効率化、改良により16両編成時の車両価格は約36億4000万円と500系の約50億円から大幅にコストダウンされている。 そして、走行時のエネルギー消費についても270km/h走行時の利用客一人当たりの消費エネルギーが14.7kWh(300系:16.0kWh(270km/h走行時)、0系:17.5kWh(220km/h走行時))と高効率となっている。
なお、JR西日本保有車(B、E編成)については500系用の台車(WDT205A形:電動車)を履き、ギア比がJR東海保有車(C編成,台車はTDT204形:電動車)と異なるため制御装置の特性を変更して、加速特性をそろえている。
しかし、あまり知られていない相違点として、主変換装置内の機器の搭載順序が両者でまったく違うというものがある(JR東海車は山側から、コンバータユニット、インバータユニット、主電動機送風機の順だがJR西日本車はそうなっていない。)。これは自社の検修設備にあわせてそれぞれが独自の配列を決めたためと説明されている。この違いのため、分解を伴う検査はそれぞれ自社の工場でしか行えない。両社間を跨いで帰属させるためには、心臓部である主変換装置か検修設備の改修工事が必要となる。
[編集] 運用
2003年より「のぞみ」の運転本数が増加したことにより、主に「のぞみ」に充当されるが、「ひかり」や「こだま」(7000番台による運用は、広島~博多間で朝下り1本、夜上り1本のみ)でも使用している。
また山陽新幹線においては、8両と短い編成(7000番台・E編成)ながら最高速度は285km/hで「のぞみ」並みの速度で運転する「ひかりレールスター」でも活躍している。
また、16両編成車両については300系との乗車定員の互換性がとられており車両手配時の利便性が向上している。
700系使用列車も500系と同様に時刻表に掲載されているが、臨時列車では300系使用となっていても、700系で運行されることがある。
今後、N700系の増備が進むにつれて「のぞみ」は順次N700系に置き換わり、引き換えに「ひかり」、「こだま」に使われることが予想される。
[編集] エクステリア
先頭形状は、500系と同等の微気圧波対策効果を短いノーズで実現するために、エアロストリームという「カモノハシ」のような形状となったが、そのために見る角度によって印象が大きく異なるほど、デザインに関しては賛否両論である。近未来的かつ先鋭的なデザインが好評な500系と対比して語られることも多い。
登場当初側面を見ただけでは区別が付きづらい300系と区別するために、JR東海のC編成、JR西日本のB編成ともに「700」のロゴ入りマークを貼り付けている。(写真参照)さらに、JR西日本のB編成では先頭部に青字で「JR700」の文字が入っている。(写真参照)
行き先表示器はJR東海の編成が巻取り式に対し、JR西日本の編成はLEDを用いた電光式を採用している。パンタグラフのカバーはJR東海の編成は灰色、JR西日本の編成は白である。その他、編成番号、形式番号の書体(JR東海はスミ丸ゴシック(国鉄時代からの標準書体)、JR西日本は新ゴ)など細部で違いがみられる。
[編集] 「AMBITIOUS JAPAN!」キャンペーンとの連動企画
2003年10月1日の新幹線品川駅開業に合わせて「AMBITIOUS JAPAN!」キャンペーンが開始されるのに合わせて、JR東海のC編成では、先頭車の側面ライン中央を切断する形で「AMBITIOUS JAPAN!」の文字が書かれ、300系も含む一部車両のドア横には円形の「AMBITIOUS JAPAN!」ステッカーが貼られた。このキャンペーンは2005年の愛知万博(愛・地球博)開催に合わせて当初予定より延長されたが、その閉幕に伴って終了となり、「AMBITIOUS JAPAN!」ステッカーも2005年9月頃より全検など検査入場を受けた車両から順次剥がされはじめ、2005年10月末には全編成から姿を消した。但し、車内放送チャイムに関してはAMBITIOUS JAPAN!(JR西日本所有車は「いい日旅立ち・西へ」)を引き続き使用している。
JR東海所有、京都駅にて(2004年8月4日) |
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東京駅にて |
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東京駅にて |
[編集] インテリア
16両編成の場合、編成は新大阪駅・博多駅より数えて8号車~10号車をグリーン車、他は普通車で構成されている。
座席配置は300系と共通であるが、300系と比較して揺れが少ないものの座席はやや硬い感がある。これは編成全体の軽量化を優先した為、座席にスプリングを用いず、重ねたウレタンを用いているためである。これに対しては乗客からの不評もあって、N700系では座席にスプリングを復活させる方向で開発が進められている。300系・500系にあったサービスコーナーは廃止され、代わりに飲料の自動販売機が設置されている(初期は弁当の自動販売機も設置)。飲料の自動販売機が設置されたことを受け、冷水器は搭載していない(後に500系なども追随して新幹線では全廃)。
内装はJR東海のC編成とJR西日本のB編成で大きく異なり、C編成の普通車は大変明るくシートの色はカジュアルな水色であるのに対し、B編成は濃い紺色のシートで内装は「レールスター」E編成と同じで落ち着いた感じである。このため乗ったときの印象が全く違う。また、シートの形状はJR東海の編成とJR西日本の編成で異なる。天井や壁面などの全体的な車内デザインについては300系と比較して、特にC編成の場合コストダウンの影響が随所に現れている(B編成の場合は前述のとおりE編成との部材共通化などによりその影響はまだ小さい)。JR東海のC25以降の編成とJR西日本のB編成(2001年度以降に導入された編成)では両端の座席をコンセントと縦に長いテーブルを設けたオフィスシートとし、シートの肩のグリップ(B編成では滑り止めパッド)やドアチャイムなどバリアフリー対応にもなっている。グリーン席に関してもC編成では座席背面のテーブルが存在しているの対し、B編成ではそれが無い代わりに肘掛収納のテーブルが二段折り畳み式となっており、喫煙席の灰皿の位置も異なる(C編成では中央の肘掛部、B編成では端の肘掛部)などの差異がある。
8両編成のE編成については、ひかりレールスターの項目を参照。
[編集] 関連商品
KATOからC編成が、TOMIXからB編成とE編成がそれぞれNゲージ鉄道模型として発売されている。
プラレールを初めとした玩具やグッズも多数発売されている。
[編集] 派生型
新幹線 |
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現行路線 |
東北新幹線・上越新幹線・北陸新幹線(長野新幹線)/ミニ新幹線 : 山形新幹線・秋田新幹線 |
東海道新幹線・山陽新幹線・九州新幹線 |
整備新幹線 |
北海道新幹線・東北新幹線・北陸新幹線・九州新幹線 |
基本計画線 |
北海道南回り新幹線・羽越新幹線・奥羽新幹線・中央新幹線・北陸・中京新幹線 |
山陰新幹線・中国横断新幹線・四国新幹線・四国横断新幹線・東九州新幹線・九州横断新幹線 |
未成線 |
成田新幹線 |
現行列車 |
はやて・やまびこ・なすの・とき・たにがわ・あさま/新幹線直行特急 : つばさ・こまち |
のぞみ・ひかり(ひかりレールスター)・こだま・つばめ |
廃止列車 |
あさひ・あおば |
営業用車両 |
0系・100系・200系・300系・400系・500系・700系・N700系・800系・E1系・E2系・E3系・E4系 |
試験用車両 |
1000形・951形・961形・962形・WIN350・STAR21・300X・FASTECH 360 S・FASTECH 360 Z・軌間可変電車 |
事業用車両 |
911形・912形/ドクターイエロー・East i |
車両形式・記号 |
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